ビジネス

2022.10.24 08:30

「雑誌はもうダメ」の創刊から100号 社会や世界はどう変わったか


谷本:毎年恒例のスタートアップランキング(日本の起業家ランキング)や30 UNDER 30 JAPANなど、私たちがつくってきたブランドやコンテンツは、今や他メディアからも注目されている状況にあります。さまざまな企画を通して数多くの起業家に光を当てきましたが、それは高野さんが意図していたものだったのでしょうか。



高野:これは結果の産物です。創刊号の表紙は、知り合いだったので出井(伸之)さんが出てくれましたが、それ以降は、孫(正義)さんや柳井(正)さんといった本来ならぜひ出てほしいような人はあまり出てきません。それはForbes JAPANのブランド力が弱かったから。

それならば「今は誰も知らないけど将来すごくなりそうな人を出そう」と取り上げたうちひとりが、アストロスケールの岡田光信さんです。今でこそ有名人ですが当時は誰も知らない。結果的に“発掘できた”ということです。

日本経済の「弱さ」の象徴が表層に


谷本:創刊の2014年から現在まで、様々な社会・世界の変化がありました。マクロ・ミクロの視点から、どういった動きがあったと捉えていますか。

高野:まずマクロ視点でいうと、日本経済は戦後の復興期がとても長かった。1960~90年の約30年もの間ずっと繁栄の一途で、GDPで世界にも2位なったし、1980年代は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で「日本はすごい」と世界から見られていました。

ところが、次の1990~2020年までの30年間は下降し続けている。下降というよりは、他国の成長にどんどん抜かれていった。今の日本の平均給与とアメリカの平均給与は約2~2.5倍の差がついています。日本が400万円ならアメリカは1000万円です。これだけ差がついても生きて来られたのは、1960年代からの30~40年間に貯めた富の蓄積があったからです。

その蓄積の食いつぶしの末期だったのが、Forbes JAPANを創刊した2014年から2022年にかけて。とうとう耐えらなくなってきたということを、現在の円安が象徴しています。

それまでは「日本は、成長こそしないけれど1番安全でお金を持っている国」だと思われていた。しかし、最近円安になって「そうじゃないんだ」となりましたよね。かねてから日本経済は弱くなってきていて、ただその弱さの象徴が今まで1回も表層に出てきていなかっただけ。やっと最近になって現れてきたのだと思っています。
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聞き手=谷本有香 文=堤美佳子 編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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