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2022.10.15

年末商戦を控えた米小売業界、在庫過多のほかにも不安材料が

Getty Images

米国の小売業界は、2022年第4四半期という正念場を迎えた。しかし、第1四半期はじめと同様に、過剰な在庫に苦しめられている。おまけに、年末のホリデー商戦は販売不振で、2023年の前半も低調との見込みだ。

「悲惨だとは言いたくない」。米アパレルブランド、アーバン・アウトフィッターズのリチャード・ヘイン最高経営責任者(CEO)は、アナリストを前にそう語った。「しかし、割引や値下げという点から言えば、厄介なことになろうとしている」

経営が最も好調なアパレル企業のひとつとされるナイキも、現在は災難に見舞われたブランドとして注目されている。2021年はじめには、同社商品が入手しづらい状況となっていた。新商品を載せたコンテナ船が沖合で待機を余儀なくされていたからだ。

その一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて、自宅に閉じ込められていたものの、米連邦政府が支給した景気刺激策の給付金で潤っていた消費者が少しずつ、エクササイズ用の器具やウェアを購入するようになった。ナイキは、需要の高まりが続くと見て、商品の製造を発注した。

現在のナイキは、数々の大手企業と同様に、サプライチェーンの混乱に巻き込まれている。すでに販売シーズンが過ぎた商品が大量に届いており、それらを倉庫に保管せざるを得ない状況に陥っているのだ。同社が2022年9月末に発表したところによると、北米における在庫は、前年比で65%と大幅に増加し、輸送中の商品も85%と急増している。同社は「果敢に行動」して在庫を一掃し、今後に向けて発注を削減している、と述べている。

ウォルマートやターゲットなどの大手小売店は、2022年第2四半期からすでに在庫が肥大していることを明かし、増加率をそれぞれ32%、43%と発表していた。より広範囲で見てみると、米国勢調査局が発表する小売業者の売上高在庫比率(在庫と売上高の関係を示す比率)は2022年7月、パンデミックで都市封鎖が実施される直前以来となる、3年ぶりの高水準に達した。

これは、「ブルウィップ効果(bullwhipは、牛を追うための鞭)」とも称される問題だ。サプライチェーンの川下で発生した小さな需要変動が、川上に伝わっていくにつれて大きくなっていく現象である。

ブランド側が発注を増やすと、流通業者がそれに倣ってあとに続き、メーカーが生産増強を図り……というようにして広がっていくのだ。カエルを飲み込んだヘビは、お腹が大きく膨れ、消化に時間がかかる。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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