「面で加熱する技術を持っている企業は、他にも世界に数社ほどありますが、SUN METALONの3Dプリンターは他社よりも加熱できる体積が大きい。そのため、他にはない圧倒的スピードで安価に金属造形をすることが可能になっている」と西岡は語る。
これまでは企業との有償の実証実験を積み重ねていたが、今後は初めての装置販売を間近に控え、金属部品製造における「高能率・低コスト」「複雑形状を速く・安く」といった顧客ニーズに応えていく。
目指すは「金属製品の地産地消」
SUN METALONの金属3Dプリンティング技術は、西岡が前職時代に読んだある1冊の本から着想を得たという。
「金属製法の歴史に関する本に、ある金属の加工方法が書かれていました。そこからヒントを得て、旧知の中であった景山宏治(現CSO)と共同創業者の前田雄貴に声をかけたんです。休日に、キャンプ場等での実験を繰り返して今の技術にたどり着きました」
前職である新日鉄(現在の日本製鉄)で、新規事業として進める選択肢もあった。独立の道を選んだ理由を、西岡は次のように話す。
「会社の資材などは一切使わず、プライベートの時間と資材で取り組んできた研究でした。
もともと金属業界に対する課題意識は強く持っていて、巨大な設備で大量生産をする業界構造にはもう限界がきていること、そして世界での3Dプリンティング分野の勢いを考えると、スタートアップとしてクイックに動いていきたいと考えました」
最終的に目指しているのは、金属3Dプリンターにとどまらず、その原料となる金属粉末も現地鉱石から製造すること。これにより、金属部品をその場で製造可能にしていく。
現在は、巨大な製鉄工場で金属の原石から金属を生成し、何度もの輸送と加工を経て金属製品ができあがっているが、そのプロセス全てを1つの箱のようなサイズ感で実現したいという。
「箱に鉱石を入れて金属の粉を生成し、それを3Dプリンターに入れれば、その場で金属部品を造形することができる。必要なときに、必要な量だけ部品をつくることができるようになれば、海外からの援助に依存せざるを得ない、インフラが十分でない国にとって、自ら産業を生み出す手段にもなり得る」
今回調達した資金は、研究開発費と人件費に充てる予定だ。
「事業開発側のメンバーも多く採用していて、調達直後からすでに2倍の人数までチームを増強しています。国内外でさらに20名程度採用し、装置開発を加速していきます」