たとえば以下に紹介するTikTokの動画では、「バターボード」を従来のシャルキュトリーボード(加工肉を中心に盛り合わせたおつまみプレート)の延長線上にあるもの、あるいは改良されたものであるとして扱っている。
@themodernnonna A Butter Board IS THE MOST BRILLIANT IDEA I Have Ever Come Across : @justine_snacks #butter #butterboard#fyp original sound - THEMODERNNONNA
はっきりさせておきたいのは、木の板にバターを塗ったものは、伝統的なシャルキュトリーボードとは同じものではないということだ。チーズや肉、ドライフルーツ、その他ジャムなどを盛り合わせたものがシャルキュトリーボードだ。TikTok上のいわゆる「バターボード」の多くと、ありふれたシャルキュトリーボードとの間には、大きな違いがある。
第1に、正確には「バターボード」は板の上に完全に乗ったものではない。木の板にバターを塗り込むことで、木のさまざまな割れ目や隙間にバターが入り込むことになるだろう。これは従来のシャルキュトリーボードとは大きく異なる点だ。ブリーチーズ、シェーブルチーズ、カマンベールチェダーチーズ、ゴーダチーズ、マンチェゴチーズなどを板の隙間に塗り込めることはあまりしないだろう。こうしたひび割れがあると、残念な結果になりかねない。陽が当たらず湿気ていることが多いため、悪い微生物が繁殖しやすい環境なのだ。Journal of Food Protection(食物安全)誌に掲載された研究では、大腸菌、リステリア・イノキュア菌、リステリア・モノサイトジーン菌、サルモネラ・ティフィムリウム菌などが木のまな板にいかに定着しやすく増殖しやすいかが示されている。今度、パーティでシャルキュトリーボードを舐めたい衝動に駆られたら、そのことを思い出して欲しい。
木製の板のひび割れに常温のバターが入り込むことで、微生物が繁殖しやすくなる。木の板の割れ目からバターをすくい上げることで、繁殖した細菌をもすくうことになる。それが胃腸に入ることはあまり嬉しくはないだろう。これでは、何らかの感染症にかかるかどうかのギャンブルをしているようなものだ。なので、木の板にバターを塗る場合は、板にひび割れがないことを確認してからにしよう。
第2に、TikTokのこの「バターボード」には、おそろしく大量のバターが乗せられているようだ。たとえば、以下のTikTok動画の女性は、まるでピザにチーズを乗せるかのように、ボードにバターを塗りたくっている。
@convinoboard Stay tuned for my honest review on these butter boards #butterboard #entertainingathome#foodie#foodlover#appetizeroriginal sound - ConVino Board
これほどのバターを食べることは、サラミやプロシュートなどの生ハムや、ホットドッグ、チーズを食べることと同じではない。それだけ食べたら、どれだけのカロリーがあり、どれだけの飽和脂肪を摂取することになるのか考えて欲しい。シャルキュトリーボードにバターを乗せたり、バター過剰なサンドイッチを食べたり、ピザのトッピングにバターを注文したりすることがあまり行われないのはそれが理由だ。長い目でみたときには、バターの摂りすぎは、肥満、高血圧、心臓病、がん、その他の慢性疾患のリスクを高める可能性がある。