経済・社会

2022.10.04 12:00

為替介入「2.8兆円」の思わぬ効果 英ポンド安を増幅させた?


英国に学ぶ教訓


「財政懸念」と「緩和と引き締めの共存」といった、政策のちぐはぐさは日本にも似ている部分がある。

円安政策を「緩和」だとするならば、円高に向かわせる為替介入は「引き締め」の側面もある。そして、日銀は指値オペで10年の長期国債を0.25%の水準で無制限に買う「緩和策」で物価上昇を目指している。一方で、政府は物価上昇を抑えるために政策を打ち出している。

値上げは国民生活にダメージが大きいため、日本政府は国債発行ではなく、主に予備費の範囲内で、物価対策を行っている。ただし、所得税・法人税の減税も行っていない点は英国とは異なる。このように「緩和」と「引き締め」が混在するちぐはぐさは、英国とレベル感は異なれども似た点は存在する。

最後に、英国と日本を比較した際に最も異なる点に言及したい。

英国は米国に次ぐ世界第2位の「対外純債務国」
▶債務残高は2021年末時点で113兆7000億円

日本は世界第1位の「対外純資産国」
▶日本の対外純資産は2021年末時点で411兆1841億円

簡単に言えば、英国は借金(債務)が多く、日本は債権が多いため財政状況は全く異なる。

債務国であり、ドルのような基軸通貨国でもない英国の金融市場がこれまで安定していたのは、ロンドンの金融街シティが信頼できる市場だという点が大きい。

その点から日本の参考になるのは、金融市場から心が離れないよう、財政政策と金融政策の整合性が求められるということだ。もちろん、どの国も矛盾や排反するような政策を内包するのは当たり前のことだが、その“限度”や“バランス感覚”が問われる。

日本には、マーケットに見放されない「塩梅」の舵取りができると思う。

文=馬渕磨理子 編集=露原直人

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事