しかし、為替介入の効果=ゼロではない。思わぬところに効果が発揮されている。
9月22日に実施した「円買い・ドル売り」の為替介入金額は2兆8382億円。円買い・ドル売りの1日の介入額としては過去最大規模とみられる。22日に1ドル=146円手前まで円安が進んだが、伝家の宝刀である為替介入を実施後は140円台まで、およそ5円の円高となった。しかし、数日後には144円台で推移していることから、下半期も円安基調に変わりはなさそうだ。150円も引き続き視野に入る。
ではなぜ「効果=ゼロではない」と考えるのか。
145円台での為替介入はマーケットに対して、水準感を示したことになる。米国やその他の国が続々と利上げを実施するなかで、9月22日に日銀が「金融緩和継続」を表明することは分かり切っていたことだ。日銀の金融政策の発表と同時に、抱き合わせ、“あの”タイミングで「為替介入」を実施しなければ、円安に歯止めはかからなかっただろう。
一時的かもしれないが、投機筋の視点をそらすことに繋がったと考えるのが妥当だ。これまで投機筋は「ドル買い・円売り」のポジションを取っていたが、為替介入により22日以降は「円売り」をしづらい環境になった。
債券安・ポンド安・株安
投資家たちの心理としては「ドルに対して、円以外に売れる通貨はないのか……」。そう思っていた矢先に、格好のエサがまかれた。
ポンド売りだ。
23日、英国のトラス政権は7兆円を超える大規模減税を発表した。これにより5年間で25兆円の財政負担が増える。しかも、財源を国債発行で賄うというのだから、英国の財政懸念から金利上昇し、債券安・ポンド安・株安のトリプル安に見舞われた。
政策の整合性が取れないと、無残にもマーケットから売りを浴びせられる。つまり、英国は利上げによる「金融引き締め」をやりながら、大規模減税という「緩和」政策を打ち出したわけだが、減税で英経済が成長するかは懐疑的であり、マーケットはNOを突きつけた。
むしろ財政懸念の方が先立つと判断したのだ。そこで、慌てて中央銀行(BOE)は長期国債を無制限に買い入れるという状況になった。
減税をやり過ぎると、需要をさらに刺激してしまい、物価を上昇させる可能性がある。物価上昇を止めるには、財政緊縮あるいは金融引き締めで需要を冷やすしかない。これが経済の理論だ。