しかし、地球最古の岩石の中に原始生命の微化石を見つけることすら困難なのに、火星でロボットが集めたサンプルから見つかる可能性などはるかに小さい。すなわち、地球の過去の生命を特定することに悪戦苦闘しているのに、火星のサンプルでそれをすることにどんな希望があるのだろうか?
「極めて困難なことだと私は思います」と、フランス、オルレアンの分子生物物理学センターの研究者であるウェストールはいう。「これについて多くの議論がなされることは間違いありません」
現在の火星ミッションは、すべて肉眼で見える微生物マップのレイヤーを探しているとウェストールは話す。個人的には見つかるとは思っていない、生命の痕跡を見つけることは極めて難しく化石化している場合は特にそうだと彼女はいう。
化学合成生物とは、無機物である岩石や鉱物の表面を酸化する、あるいは水素などその他の無機物を経由することによって自らのエネルギーを得る生命体のことだ。これは最も検出が困難だとウェストールはいう。化学合成生物は後に進化した太陽光からエネルギーを得ることのできる生命体とは異なっている。
しかしながらウェストールは、化学合成生物に似た微生物生命形態は、火星に最初に発生した生命体でもある可能性が高いと考えている。
火星の現地での分析は最小限の機器を用いて行われていて分解能も低いとウェストールはいう。私のいうような化石を研究するためには、火星では行えないサンプル調製が必要だと彼女はいう。
ウェストールらはEPSCの論文要約に、設備の整った最新技術の地球の実験室であっても、化学合成生物の化石を同定することは困難であり、しばしば論争になると指摘する。これは、近い将来の火星サンプル持ち帰りミッションにとっても課題になるだろうと彼らは述べている。
地球で最初の生命が発生した場所について
この地球で生命が最初に発生したのは、浅い水たまりの中、太陽の強い紫外線放射から身を守る数フィート(1メートル前後)の水があった場所だろうとウェストールは考えている。地球の形成から3億年以内に、地表には液体の水が存在し、私たちの惑星はすでに居住可能だったと彼女は説明する。その頃すでに原始的微生物が存在していた可能性もあると彼女はいう。