忘れ去られていた英国のカエルが絶滅危惧種から復活するまで

プールフロッグ(学名Pelophylax lessonae)はイングランド南東部全体に少数生息する比較的大きい太陽を好む(クレジット:Getty Images)

イングランドのカエル、pool frog(プールフロッグ)が、見過ごされていた両生類から最優先保護種になった経緯は、何が在来種であるかに関する私たちの認識(あるいは誤認識)に重要な疑問を投げかけるとともに、忘れられていたカエルの繊細な美しさに光を当てた。

英国人は昔から自然、特に原産の植物と動物を収集、識別することに魅せられてきた。このため英国内のどこかにいる生物、特に脊椎動物が、在来種であると認識されていなかったという状況は実に驚くべきことだ。しかし、プールフロッグ、学名Pelophylax lessonae(プールカエル、アカガエルの一種)に起きたことは、まさしくそれだった。

「奇妙にうるさく、どこか音楽のような」プールフロッグの鳴き声は、過去数十年間イングランド東部の湿地帯でよく聞かれる特徴的な音だった。しかし、誰もがこのカエルを、ヨーロッパ本土から持ち込まれた種であると思い込んでいた。どこにでもいる、しかし特徴的な、伝統的な自然主義者たちが愛した娯楽の対象だった。このため、このカエルが沈黙し始めたことを誰も強くは気に留めなかった。1990年代末、時はすでに遅すぎた。プールフロッグはイングランドで最後の住処だったThompson Common(トンプソン・コモン)から姿を消した。

同種がイングランドから消え始めたその同じ頃、このカエルの起源の謎を探ろうとある研究者グループが集結した。それは在来種なのか、それとも持ち込まれたものなのか? このような命題は珍しいものではなく、種の範囲の境界近くでよく起きる。在来であるか否かという種の地位は、特定の種を復活、保護すべきかどうかの判断に大きな影響を与える。

「プールフロッグは特に興味深い研究対象だと私は思います」と、ドーセット、ボーンマス拠点のAmphibian and Reptile Conservation(両生類・爬虫類保護団体、ARC)の最高経営責任者、トニー・ジェントはいう。「絶滅した動物が在来種であることを証明するためにあらゆる種類の情報を集めることは、かなり独特な取り組みです」

さまざまな分野の専門家からなるこの研究チームは、カエルの生物音響学的、遺伝学的特徴や準化石化した骨の生体構造の特徴まで調べ上げ、プールフロッグが実際にイングランド原産であることを発見した。この証拠によって、プールフロッグがヨーロッパから古代のランドブリッジ(かつて大陸間を繋いでいたと考えられる陸地)を渡って来てイングランドに定着したことを明らかにした。ドッガーランドとして知られているこのランドブリッジは海面上昇の犠牲となり、最終的に紀元前6150年頃、波の下に沈んだ。
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翻訳=高橋信夫

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