野生のコーヒーの木の大半はアフリカやマダガスカルで育っているが、森林破壊や疫病の影響でその数は減少が続いている。人気のコーヒー豆の大半は、世界の大規模なコーヒー農園で育てられているが、コーヒー豆の原種の絶滅はこの分野のビジネスに大きな打撃を与えかねない。
世界で最も人気のコーヒーの原種としては、アラビカ種(Coffea Arabica)とロブスタ種(Coffea canephora)の2種類があげられる。しかし、アラビカ種は栽培が難しく、生育には涼しい環境が必要で、わずかな気候の変動も品質に影響を与える。
アラビカ種が絶滅したとしたら、コーヒー業界は大きなダメージを受けることになる。なかでも大きな被害を受けるのがエチオピアだ。世界のコーヒー産出量にエチオピアのコーヒー豆が占める割合は3%でしかないが、エチオピアは輸出収入の60%をコーヒー豆で得ているのだ。また、エチオピアでは1500万人の人々が、コーヒー産業に関わっている。
専門家によると、気候変動の影響により現在コーヒーの栽培に用いられている農地の50%が、2100年までに使用不能になるという。
世界的な気温の上昇によりコーヒー農園では害虫が増え、疫病も増加する。コーヒー豆の80%は途上国の貧しい農民らが栽培しており、彼らは産出量の低下や、殺虫剤にかかるコストの増加に直面することになる。消費者としてはクオリティの高いコーヒーを安価に入手することが難しくなる。
植物の多くが気候変動の影響を受けることになるが、コーヒーはとりわけ繊細な性質を持つ植物だ。平均気温がわずかに変化するだけでも、アラビカ種のクオリティはダメージを受ける。栽培を続けるために、農地を移設したり、別の種に切り替える必要も出てくるだろう。
コーヒー市場は米国だけでも2000億ドルの規模に達しており、気候変動が巨大な経済的損失をもたらすことになる。この状況が続けば品質の高いコーヒーの価格は大きく上昇し、一般に出回るコーヒーのクオリティは劇的に低下することになる。