インフルのmRNAワクチン、実用化近づく モデルナに続きファイザーも最終治験開始

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米製薬大手ファイザーは14日、メッセンジャーRNA(mRNA)技術を用いたインフルエンザワクチンの最終段階の臨床試験(治験)を開始したと発表した。新型コロナウイルス感染症ワクチン以外のmRNAワクチンの試験としては最も進んだ段階のひとつになる。mRNAワクチンは新型コロナワクチンで成功を収め、各社はそれを基礎にほかの感染症でもこのタイプのワクチンの開発を急いでいる。

ファイザーによると、ドイツのバイオベンチャー、ビオンテックと開発した新型コロナワクチンと同じmRNA技術を用いたインフルエンザワクチンを、第3相臨床試験の最初の参加者に投与した。試験は米国を拠点に実施しており、健康な成人約2万5000人を対象に安全性や効果を評価する予定。

インフルエンザのワクチンは年単位で更新する必要があり、従来の方法では鶏卵や哺乳類の細胞を使ってウイルスを培養するため、つくるのに時間がかかる。一方、mRNA技術では、ウイルスの「設計図」となる遺伝物質のmRNAを人体に注入し、感染の足がかりとなるスパイクたんぱく質をつくり、免疫の仕組みを働かせて抗体ができるように促す。必要なのはmRNAだけであるため、製造工程の柔軟性が高く、編集もしやすい。そのため、インフルエンザワクチンはこの技術を活用する有望な候補のひとつとなっている。

ファイザーが試験中のワクチンは4種類のインフルエンザウイルスを防ぐ4価ワクチンで、世界保健機関(WHO)が2022〜23年シーズンの標的として製薬企業に勧めている株をカバーしている。

ファイザーでワクチンの研究開発を統括するアナリーサ・アンダーソン上級副社長は、mRNAワクチンに関する経験があるおかげで、より効果の高いインフルエンザワクチンの開発も有利に進められていると説明。mRNA技術の特性によって、今後の季節性インフルエンザや、インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)に際し、より柔軟で機動的なワクチン生産が可能になると述べている。

WHOによると、毎年、世界全体で29万〜65万人が季節性インフルエンザで命を落としており、重症者は300万〜500万人にのぼる。20世紀にはインフルエンザのパンデミックが3回起き、うち1回では約5000万人が死亡している。

インフルエンザのmRNAワクチンは米モデルナも開発しており、すでに6月に第3相臨床試験を始めている。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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