しかし、悪役や、非難すべき相手を探すことは、さらなる混乱への早道となる。それよりも、ハートを使ったリーダーシップを発揮するアプローチを試みよう。
筆者は先日、エドワード・サリバン(Edward Sullivan)から話を聞いた。新刊『Leading with Heart: 5 Conversations That Unlock Creativity, Purpose, and Results(ハートフルなリーダーシップ:創造性・目的・結果を解き放つ5つの会話)』の共著者である同氏が言うには、ハートを使ったリーダーシップを発揮する人は、「判断するよりも、好奇心を示す」のだという。
好奇心を示すこと、共感的に話を聞くこと、建設的に対応すること。こうしたことは、言うは易しいが、行うことは難しい。
古いタイプの経営者は、「従業員は、問題ではなく、解決策をリーダーに伝えるべきだ」と注意しがちだ。こうした言葉は、説明責任や、先を見越した積極性を促すように聞こえるが、現実にはたくさんの問題が含まれている。
サリバンは、こう語っている。「今日の最高のリーダーは、『解決策だけでなく、問題を持ってきてくれ』と言う。多くのリーダーは、『問題を持ってくるな。解決策をもって来い』と言うが、それでは、難問に手をつけない社員を養成することになる。従業員が解決策を見いだせなかったために、半年前に解決できたはずの問題が、提起もされずに放置される。そして問題ははるかに悪化し、完全な混乱に陥る。そうしたことが起こってしまうのだ」
この議論の洗練された論理はさておき、多くのリーダーたちがスケープゴートを探している。たとえば、Z世代はベテランのリーダーからしばしば非難を浴びることがある。燃え尽きやすく、不快な労働条件に黙って耐えることができない、といった批判だ。しかし、サリバンのコーチングワークでは、Z世代についてこうコメントされている。
「Z世代は、感情やメンタルヘルスの観点で見れば、いままさに先頭を走っている。それは彼らが、自分に必要なものを求めることに抵抗を感じなくなってきているという点によるものだ。そうした感情をミームなどで批判したり、揶揄したりする人もいるが、この世代が、自分の境界線とニーズを明確にすることは、感情に関して知的で勇敢なことだ。
あらゆる研究が示していることだが、人は、燃え尽きそうになると、もはやまともな決断ができなくなる。我々は、自分の状態を率直に、公然と伝えようとする人々を評価すべきなのだ」