60点取れたら十分 ナジャ・グランディーバの「望みすぎない」人生哲学

ナジャ・グランディーバ(撮影=小田駿一)


周りの人と自分を客観的に見て比較できることはきっと才能の1つなんやろうけど、「あの人に比べて自分は劣ってる」とネガティブな思い込みに囚われてしまうのはソンやと思う。そうではなくて、「私はこういう人だから、違うやり方のほうが合ってるな」と考えたらいいんじゃない? 結局、そこは自分の気持ちの持ちようしだいよね。

“人と比べる思考”にとりつかれている人には、「ライバルを蹴落とすことが本当にあなたの幸せなんですか」と聞きたい。死に際に、「あいつらに勝てていい人生やったな」とは思わない気がするんよね。仕事でも趣味でも、「私の人生これに打ち込んだわ」って言えるようなものがたった1つあるだけで、だいぶ救われるような気がする。

私はもともと、そんなに他人に興味がないねん。自分と比較していちいち優劣をつけたりするほど、相手に興味を持っていないから。他人とある程度距離を保っている方が、幸せに生きられると思ってる。

だから、嫉妬心もほとんどないですね。私と同じドラァグのカテゴリで言うと、マツコ・デラックスとかミッツ・マングローブのほうが有名で活躍してるけど、あの人たちに嫉妬心はない。私はいつも「いまが自分の精一杯だ」と思っているし、2人のようになりたいと目指したところで絶対に無理やし、逆に焦って自分が変な方向に行ってしまう気がするから。

「こいつには絶対負けたくない」というライバルにたとえ勝てたとしても、すぐに次のライバルが現れるし、上には上がいる。だから人と自分を比べることにはキリがないと思うねん。



人と比べないこと。それと、人生の成功や目的を必要以上に追いかけすぎず、肩の力を抜いて、自分がいいなっていうほうにフラッと流されてみるのが好きだし、そうやって生きてきた。

「目標」とか「成功」とかを考えすぎると、私は息が詰まってしまうのよ。将来に対しても、ふんわり「いずれはこうなれたらいいな」とは考えるけど、それに向けた努力はほとんどしないですね。ただ最終的に「そうなれる気がしてる」だけ。疲れないように自分のペースで生きていくのが結局いちばんいいと思ってる。

目標はなるべく遠いところにぼんやり置いておく。明確にゴールが見えてしまうと「一番の近道で行こう」って気持ちになって余裕がなくなるから。目的地に靄がかかってる場合は、いろいろ遠回りしながら最終的にあそこに行けたらいいかなっていうスタンスをとれるでしょ。
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構成=松崎美和子 写真=小田駿一

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