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2022.09.27 12:30

アルCEOけんすうの偏愛漫画『G戦場ヘヴンズドア』|社長の偏愛漫画 #4


けんすう:漫画を描いている姿が、途中まで全然幸せそうではない。普通のぬるい幸せではなくて、人間としての幸福度がはるかに高い幸福にたどり着いているようなイメージがある。それがすごいなと思っています。
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©️日本橋ヨヲコ/小学館

栗俣:漫画が苦しみの原点になっていて、でも最終的に行き着くのは漫画という幸福。そう考えると、不思議な漫画ですよね。

けんすう:勝手な想像ですけれども、作者の実体験、感覚がすごく出ているのだろうなと思っています。細かいロジックや整合性よりも、リアリティがすごい。
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栗俣:整合性が取れていないのにリアリティがあるというのは、描いている作家本人にウソがないということでしょうか?

けんすう:ウソをつけないんでしょうね。人生の選択肢がたくさんあるなかから漫画を選んだのではなく、複雑な家庭環境で育ち、選択肢がすべてなくなって最後に残った道が漫画だった。人々の心の葛藤にグイグイ迫るドラマはリアリティがあり、何度読み返しても惹きつけられます。

創作過程を共有する「プロセスエコノミー」に思い至った原点


栗俣:『G戦場ヘヴンズドア』は群像劇なのに、登場人物全員が、自分のことを主役だとは思っていない。それによって、これだけ引きのあるドラマができているところが、けんすうさんのビジネス観につながる気がします。

けんすう:作家が創作に取り組む姿は、ヴェールに包まれていて表には出てきません。読者が目にすることができるのは、長きにわたって成果物(作品)だけでした。漫画家がどうやって作品を描き、完成させていくのか。プロセスをライブ配信できたらメチャメチャ面白い。そう思いついて、作家が作業の様子をライブ配信する「00:00 Studio(フォーゼロスタジオ)」というサービスを立ち上げました。

『ちはやふる』の末次由紀先生がライブ配信してくださったときには、驚愕したものです。その配信では、末次先生はひまわりを描くのに緑を使わず、黄色と青を揺らして描いていたのです。コミックスの表紙を描くのに20時間もかけていることもわかり、創作の過酷さと芸術性に畏れ入りました。

栗俣:末次先生の表紙のイラストは、とんでもないレベルできれいですよね。書店で新刊が並んでいるなかで、そこだけ本当に花が咲いてるようで、誰もが目を奪われる。あれのコツが、緑を使わないことだった。

けんすう:当たり前ですけど、花の絵を1個1個描くのはメチャクチャ大変なわけですよ。でも我々が表紙を見る時間は、ほんの数秒。そこのギャップがわかるのが楽しくて「00:00 Studio」をやっています。

栗俣:漫画家さんは、生みの苦しみのプロセスを見せたがらない人が多いんじゃないかと勝手に思っていました。
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インタビュー=栗俣力也 文=荒井香織

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