キャリア・教育

2022.09.20 09:00

「学校は時間とお金の無駄」といえるのはタイムマシーンを持っている人だけ

安井克至

学習は学習の上に成り立っている。今年学んだことが、翌年にやってくるステップへの基礎となる。そして、そのような基礎は、しばしば、誰もが「知っている」と思い込んでいる知識体系に収められ、当然視されるようになるのだ。将来の学習は、学校の内外を問わず、前の年に築かれた基礎の上に成り立っているのだ。家を支える礎石は、目には見えないし、家の外観の一部でもないかもしれないが、それなしに家を建てるのは間違いだ。

最後に、学習というものを単に何もない頭の中に知識を注ぎ込み、それが後で漏れないようにする作業と考えるのは間違いだ。

スポーツ選手はオフシーズンにトレーニングに励み、ウエイトルームで汗を流す。なぜ、そんなことをするのだろうか? スポーツの試合では、競技役員がプレーを中断して、選手同士でレッグプレスを競うようなことはしない。ウエイトマシンを操作する動作は、競技中に決して使うことはないのだ。

その答えは、明らかで、競技で使う筋力と持久力をつけるためだ。学生にとって学校は、特定の事実の積み重ねとは別に、さまざまな心の鍛錬と強化の場でもある。(重りを使わないでウェイトマシンを使うのは、アスリートにとって得策ではないように)学生もコース内容がなければ、その強さを身につけることはできない。しかし、授業内容を忘れても「心の筋肉」は残っているのだ。

もし人生を早送りして、何が必要かを正確に知ることができたら、完璧に効率的な教育プログラムをデザインできるかもしれない。しかし、そんなことはできない。

だから代わりに、私たちは、学生ができる限りの道具を集める機会を提供し、それが他の機会や選択肢につながり、自分の将来を思い通りに設計できるようなシステムを設計するのだ。国として、すべての学生に理想とするすべての機会を提供しているわけではない。しかし、効率的になるために、時間やお金の無駄を省き、より少ない機会を提供するということは、平均的で貧弱な教育システムを生み出すことになるだろう。

forbes.com 原文

編集=Akihito Mizukoshi

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