30U30

2022.09.21 08:30

人間の「オーラ」はつくれる? 音楽家とAI研究者が対談

(左から)大澤正彦、江﨑文武

(左から)大澤正彦、江﨑文武

これからの時代において、「テクノロジー」と「人間らしさ」はどのように両立していくのだろうか。

音楽と工学の融合で独自の楽曲を制作している音楽家の江﨑文武と、「ドラえもん」の実現を目指して研究・開発に取り組む日本大学文理学部情報科学科 助教の大澤正彦。

Forbes JAPAN 30 UNDER 30」受賞者の2人が、「テクノロジーと人間らしさ」をテーマにトークセッションを行った。

——お2人はともに、テクノロジーを活用して人間らしさを追求していらっしゃいます。テクノロジーと人間、それぞれの長所・短所はどのような点ですか。

江﨑:テクノロジーは、僕たちの暮らしを豊かにしてくれるものだと信じていますが、ここ数年は功罪の“罪”の部分も多く見えてきているように思います。毎日、大量の情報にまみれて、いろいろな人の声がダイレクトに届いてしまってストレスを感じてしまう。距離感をつかむのが難しい時代になりました。

そんな中で、音に関して言えば、ノイズキャンセリングの技術で「音を聞かなくていい権利」という、新しい権利のひとつが実現されました。本来、聴覚は逃れようのないものでしたが、「聞きたい音だけを聞いていい」ようになったんです。

また、多くの人がカナル型イヤホン(耳の奥へ入れ込むイヤーピースが付いているもの)を使用するようになり、鼓膜のすぐ近くで音を聞くことが当たり前になっています。テクノロジーによって、音楽を聞く環境に劇的な変化が起きています。

大澤:新しいテクノロジーが生まれることによって、さらに新しいテクノロジーが指数関数的に発展していきます。アメリカの発明家レイ・カーツワイルが「収穫加速の法則」として提唱した原理です。そのため、僕たち人間の体と、テクノロジーによる環境変化とのズレが大きくなってきていますよね。

テクノロジーによって、鼓膜のすぐ近くで音を聞けるようになったけれど、そんなことを僕らの体は想定して設計されていない。僕たちの情報処理能力を超えて、情報がどんどん入ってきてしまい情報過多に感じる。人間とテクノロジーの、変化のスピードギャップは課題だと感じました。


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文=堤美佳子 撮影=You Ishii

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