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2022.09.21 08:30

人間の「オーラ」はつくれる? 音楽家とAI研究者が対談

(左から)大澤正彦、江﨑文武


——人の感性に訴えていく“人間らしい”ものと、“テクノロジー”とのバランス調整が必要だということですよね。
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江崎:音楽を届けるときには、人はどうしたら「感動」という感情を抱くのか、そこをテクノロジーでどのように支えられるのかは、常に考えなければいけないと思っています。

僕は、「音楽は空間とテクノロジーによって規定されてきた」と考えています。教会は音の響きが豊かになるように設計されていたし、マイクやスピーカーが発明されると、ボソボソ声でもウィスパーボイスでも音楽が成立するようになりました。

現代は、イヤホンでこれだけ鼓膜に近い距離で音楽聞いてもらえるなら、またそこに人間の感性を動かすための新たな表現があるはず。人間の感覚が追いつかなくとも、テクノロジーの進化によってその差にアプローチしていく、そんな挑戦をしていきたいです。
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大澤:一方で、クラシック音楽を現代の私たちが聞いても素晴らしいと思うのは不思議ですよね。例えば、「iPhone40」が出た後にiPhone6を出されたらると「なんでこんなに重いんだ」って思うでしょうけど、音楽に関してはそうじゃない。日々新しい音楽を聞いている我々も、昔つくられた音楽を聞いて感動できるんです。

テクノロジーの文脈でよく議論されるのが、「テクノロジーが(音楽などを)新しいものに塗り替えている」というよりも「選択肢を増やしている」という話。僕はそのどちらかではなくて、新しい音楽をテクノロジーで生み出すこともできるし、過去につくられてきた音楽を届けることもできる。そういう世界観なのかなと思います。

学校で音楽をつくる時代がくる?


——教育領域における、人とテクノロジーとの関係については、どのように考えていますか。

江崎:音楽教育においては、積極的にテクノロジーの助けを借りるべきだと思っています。同じ芸術分野でも、「絵」に関しては、誰もが図画工作の授業で山の絵を描いたり、その時の気分を絵にしたりしたことがあると思います。

でも、「今の自分の気持ちを作曲してみよう」と、音楽をつくったことのある人はほとんどいないのではないでしょうか。それは楽譜や楽器という一定の訓練を必要とするツールが必要である、という制約があったからです。

でも今は、iPadやiPhoneのアプリで簡単に音楽をつくったり、手軽に録音や音の編集ができたりするようになりました。それならば、幼稚園生にピアノで音楽を教えるのではなく、タブレットやiPhoneを配って「幼稚園の周りの面白い音を録音してきて」というアプローチもできます。

「音って面白いんだな」と思ってもらえる教育をすることで、“表現の教育”である本来の音楽教育ができるのではないかと思っています。
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文=堤美佳子 撮影=You Ishii

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