配給会社の言葉を借りれば、「超高速列車に乗り合わせた10人の殺し屋たち。彼らの過去、そして因縁。物語の最後、終着点・京都で明らかになる衝撃の真実とは」というのが、作品の簡単な内容だ。
『ブレット・トレイン』
監督は「アトミック・ブロンド」(2017年)や「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」(2019年) のデヴィッド・リーチ。製作会社はアメリカのコロンビア ピクチャーズなどで、生粋のハリウッド製の作品がなぜ日本を舞台にという疑問が湧く。
答えはシンプルだ。原作が伊坂幸太郎の小説「マリアビートル」だからだ。2010年に刊行されたエンタテインメント小説で、「グラスホッパー」「AX アックス」と並ぶ、通称「殺し屋シリーズ」と呼ばれる人気作品の1つだ。
日本に対する「誤解」ではなく
映画「ブレット・トレイン」では、小説の舞台となっている盛岡へ向かう東北新幹線ではなく、東京から京都へ向かって疾走する弾丸列車(ブレット・トレイン)のなかで物語は展開されていく。
『ブレット・トレイン』より。列車内の撮影はすべてセットで撮影された
運の悪さが常にまとわりつく殺し屋レディバグ(ブラッド・ピット)は、ひさしぶりの仕事復帰に、仲介のマリア(サンドラ・ブロック)から依頼された、東京駅を出発する列車のなかでブリーフケースを奪うというミッションを選ぶ。
列車が走り出してすぐにケースを回収して品川駅で降りようとしたレディバグは、彼に強い復讐心を抱く殺し屋ウルフに襲われる。さっそく持ち前の「不運」を発揮することになるレディバグだったが、やはりそれだけでは済まなかった。
列車には、他にもかつてレディバグの「仕事」のライバルであった殺し屋コンビのタンジェリンとレモン、息子を人質に取られている元殺し屋キムラ、そのキムラを微笑みながら脅迫する謎の女子学生プリンス、蛇の猛毒を使う暗殺者ホーネットなどが乗り合わせていた。
『ブレット・トレイン』より。謎の女子学生プリンス
「レディバグ」という名前は、幸運を運んでくる「てんとう虫」を意味する。簡単に終わるはずだったレディバグのミッションは、幸運どころか次々と降りかかる不運に見舞われ、終着駅の京都へと爆走する列車のなかで、思いもかけない展開にさらされていくのだった。