ビル・ゲイツの声は森林を保護するインフレ抑制法よりも響く

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カーボンクレジットで消火活動


例えばカリフォルニア州では昨年、山火事で250万エーカー(約1万110平方キロメートル)の土地が焼失した。規制当局は2億3100万のカーボンクレジットを発行し、企業がカーボンニュートラルと主張しながら二酸化炭素排出量の制限を超えることを可能にした。BPやマイクロソフトなどの企業は森林を保護するためにこのクレジットを購入している。しかし2015年以降の森林火災で多くの木が枯れた。そのために570万〜680万トンの二酸化炭素が放出されたと米非営利公益法人のCarbonPlanは指摘する。

米国立省庁間消防センターでは、森林火災を少なくとも100エーカー(約0.4平方キロメートル)の木材または300エーカー(約1.2平方キロメートル)の草地を破壊する大規模な炎と定義している。

REDD+を考案した熱帯雨林諸国連合のマネージングディレクターであるフェデリカ・ビエッタは「インフレ抑制法は米国が森林と農地という巨大な炭素吸収源を強化するための先例となる」という。「REDD+は気候変動という非常事態に立ち向かう最前線にいる農民、牧場主、森林所有者を認識し、彼らに直接投資する。同様に重要なのは、毎年米国に災害をもたらしている山火事に立ち向かえるようにすることだ」

ビエッタは「中南米、アフリカ、アジア太平洋地域の熱帯雨林と合わせると、米国の森と土地は大きな気候変動対策に貢献する」ともいう。「バイデン大統領には新法にとどまらず、パリ協定に基づくそのメカニズムを通じて熱帯雨林の保全に取り組む国々を支援してほしい」

気候変動に関する昨年の世界会議で、熱帯雨林諸国は2030年までに森林破壊の傾向を逆転させることを約束した。その裏には官民の利害関係者による200億ドル(約2兆8130億円)の直接的な寄付があった。しかしカーボンクレジットの購入は国内外でのネットゼロ目標の達成にも不可欠だ。

熱帯雨林の国々は土地を維持するために推定1000億ドル(約14兆640億円)を必要としている。炭素市場はその資金の一部を調達することができる。マイクロソフト、ドイツ銀行、BNPパリバ、アップル、グーグル、メタ、ゼネラルモーターズ、ウォルマートは気候問題に取り組んでおり、カーボンオフセットを大量に購入する力をもっている。

インフレ抑制法は米国における気候変動対策のきっかけになるかもしれない。しかし米国の政策は限定的であり、世界の取り組みの一部にすぎない。だからこそビル・ゲイツの声にはずっしりとした重みがある。ゲイツの言葉は世界に響き渡り、国や企業に一変させるような行動を促すことができる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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