透明性が高いテクノロジーとはいえ、暗号通貨やNFTの売買には当然リスクも伴う。詐欺対策やサイバーセキュリティの充実、そして消費者を保護するセーフティネットが不可欠となる。ここは、イノベーションを阻害することなく、公正な競争を促す規制づくりが当局に求められる。
規制が確立されることで、「DAO(分散型自律組織)」と呼ばれる形態で、投資やNFTを共同購入・管理する人々がますます増えるだろう。こうしたコミュニティはすでに生まれており、地域社会の投票に活用されるようになれば、政治が進化する可能性もある。
Web3の定義を巡って論争は続いているが、重要なのはその是非ではない。社会からさまざまな人が参加することで、不可逆的な進化が確実になったことだ。
「Web3」とは何か?
(左)熱烈なビットコイン信者として知られるツイッター共同創業者のジャック・ドーシー。彼が立ち上げたもう一つの簡易決済企業ブロックは、ビットコインを取り扱っている。(右)米VCアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)共同創業者のマーク・アンドリーセン。a16zは「Web3」という言葉を推しており、数多くのWeb3関連スタートアップに出資している。
(左)テスラの“テクノキング”こと、イーロン・マスク。ツイッター上の論争を見逃すはずもなく、「Web3を見た人いる? 見つからないんだけど」と悪ノリして騒ぎを大きくした。(右)暗号通貨取引所コインベースの共同創業者ブライアン・アームストロング。NFT市場について「暗号通貨取引以上の規模に成長する可能性がある」と、期待を隠そうとしない。
いつの間にか、人口に膾炙(かいしゃ)した感がある「Web3」。由来は、ブロックチェーン技術開発企業パリティ・テクノロジーズ創業者のギャビン・ウッドが2014年に提唱したインターネットの未来像としてのWeb3.0にあるが、近年、「Web3」と言い換えられるようになり、その定義も少しずつ広がってきた。そこへ、ツイッター共同創業者ジャック・ドーシーのツイートが導火線となってツイッター上で爆発的な論争へ発展した。ただ一方で、「マーケティング向けのバズワードに過ぎない」という醒めた声も。
これからわかるNFTの「真価」
21年3月に、競売会社クリスティーズでデジタル・アーティストの「Beeple(ビープル)」こと、マイク・ウィンケルマンの「Everydays:The First 5000 Days」が作者存命中のアート作品としては史上3番目に高い6900万ドルで落札されたこともあり、NFTアートに注目が集まっている。だがNFTは決して“救世主”ではない。あくまで販売・購入の選択肢が増えるのであって、売れる作品と売れない作品があることに変わりはない。暗号通貨の価格とも関係があるので乱高下するリスクもついて回る。
セレブリティが、「Bored Ape Yacht Club(ボアード・エイプ・ヨット・クラブ)」(上写真)や「Crypto Punks(クリプトパンク)」といったデジタルアートを競うように買ったことで、“狂想曲”の様相を呈したNFTブーム。
今は、「FOMO(取り残される不安)」が先んじての、あるいは投資目的の購入が多いが、上記NFT販売企業の社内体制が整ったら、リアルとの融合が本格化するはずだ。唯一無二というNFTの特性を生かした会員制コミュニティを立ち上げ、ゴルフ会員権のような独占性をもたせることもできる。