Web3ブームの先に見えるリアルとネットが融合する未来

イラストレーション=ルーク・ルーカス

「Web3(Web3.0)」は誰のものか?

2021年12月、起業家やベンチャー投資家(VC)を巻き込む議論がツイッター上で起きた。きっかけは、ツイッター共同創業者ジャック・ドーシーのツイートだ。

「“Web3”を所有しているのはあなたではない。VCと、そのLP(出資者)だ。彼らのインセンティブを逃れるなどできない。違うラベルが貼られただけの中央集権的な組織だ。何に首を突っ込んでいるのか、知っておいたほうがいい」

「Web3(Web3.0)」とは、現在のウェブで主流の企業を中央集権的なWeb2.0だと定義した場合、暗号通貨やNFT(非代替性トークン)、DeFi(分散型金融)などの基盤技術であるブロックチェーンや分散型台帳を使って分散型のネットワークを築こうとする取り組みのことである。

とりわけビットコインの利用者には、思想の観点から非中央集権型の次世代ネットワークに共鳴している人が少なくない。ただでさえ賛否渦巻く論争に、ドーシーが“所有者”だと示唆した米VC大手アンドリーセン・ホロウィッツも参戦して議論はヒートアップ。結局、ドーシーが投資会社への疑心から発したツイートだったと真意を明かして収束したが、この論争が一際盛り上がったのは、彼の問いにWeb3の理想と現実が集約されていたからだ。

いま、企業が暗号通貨やNFT、DeFiの領域に本格的に参入している。乱高下する暗号通貨市場が面白おかしく伝えられたのは過去の話。国際通貨基金(IMF)が22年4月に発表した調査からもわかるように、DeFi資産やステーブルコイン(価格を安定させるよう設計された暗号資産)市場は年々成長している。また、暗号資産市場の時価総額も大きく上昇している。

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大手金融機関の参入もあり、DeFi市場はここ数年で急激な成長を遂げている。暗号通貨も、イーサリアムがビットコインを追走する一方で、BNBやソラナの人気が高まっている。

22年3月にはゴールドマン・サックスが暗号資産の店頭オプション取引を実行し、4月にはフィデリティ・インベストメンツが、米確定拠出年金の401(k)プランでビットコインに投資できるようにすると発表している。フォーブスでは今年も暗号資産や、その基盤技術を運用してサービスを開発・提供している注目の企業50社「ブロックチェーン50」を選出した。昨年は日本企業の数はゼロだったが、今年は富士通とLINEの2社が選ばれている。

Web2.0では米国や中国の企業に先を越された日本企業にも、NFTの領域では起死回生の機会が訪れたと言えよう。アートやゲーム、音楽の販売・共有で世界的に火が付いたNFTは、マンガやアニメといったコンテンツと、その優れたクリエイターを抱える日本にとって有望な領域だ。米国では、そのNFTを売買するマーケットプレイスが次々と立ち上がっている。

逆説的だが、次なる「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」はこの中から生まれるかもしれない。また唯一無二で代替不可能なデジタル資産というNFTの特質を生かせば、コンサートやスポーツ観戦用のチケット、果てはパスポートに使える可能性すらある。NFTはブームの様相を呈しているが、その“真価”が発揮されるのはこれからだ。
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文=井関庸介/フォーブス ジャパン編集部 イラストレーション=ルーク・ルーカス

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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