火星はいつ濡れていたのか?
「最も有力な説は、水が38億年から35億年前に枯渇したというものです」とジェゼロクレーターについてウィリアムズはいう。しかし、その誤差範囲は大きい。NASAの探査車キュリオシティによるゲールクレーターの探査に基づき、科学者はその湖が数百万年から数千万年の間、水をたたえていたと考えている。
「何といっても楽しみなのは、ジェゼロのサンプルが持ち帰られることによって、年代測定が可能になることです」とウィリアムズは言った。「それによって、いつ三角州が作られたか、どれだけの期間活性だったか、そして水がいつ(少なくともジェゼロで)枯渇したのか、時期を絞り込めます。それらの発見は核心を突くものです!」
火星サンプル持ち帰り計画
ミッションにはいくつか選択肢がある。NASAはパーサヴィアランスがいつまで火星で働き続けるかわからないため、当面の間、探査車は10個程度のサンプルを自由に採取し、ジェゼロクレーターのくぼみの中に置き、ロケットを備えた着陸船が回収するのを待つことになる。最悪のシナリオでも科学者らはサンプルを手に入れる。万が一パーサヴィアランスが任務を果たせなかったときのために、インジェニュイティクラスの火星ヘリコプターも何台か送り込む予定だ。
しかし、実際はパーサヴィアランスはサンプル採取を二重化している。つまり、ジェゼロクレーターに1セットを置いた後、パーサヴィアランスはクレーターを離れてミッドウェーと呼ばれる場所に移動する計画だ。そこに到着することができ、さらに20個ほどのサンプル採取に成功したら、より広い範囲から採取したずっと大きいサンプル・コレクションを着陸船に直接送り届けることができる。パーサヴィアランスがそこまで生き延びることができなかった場合でも、着陸船は最も興味のあるサンプルが置かれた場所(ジェゼロクレーターでもそれ以外でも)からわずか15メートル以内に着陸することが可能だ。
ジェゼロクレーターの先にあるもの
「現時点でわかっているこれらの岩石に関する情報は、軌道観測で検出できる質感と鉱物学に関するものだけです」とウィリアムズはいう。これまで地質学者らは、基盤岩石とジェゼロクレーターを生じさせた隕石衝突に由来すると思われる大型岩片を発見している。「一度、探査車がジェゼロ外の地表に出れば、はるかに多くの多様性や微妙な差異が見つかるでしょう」とウィリアムズはいう。「それまでパーサヴィアランスは、堆積岩でできたジェゼロ三角州を探査します」
サンプルが地球に戻ってきたときには、火星の環境発展、さらには前生物の化学・生物学を理解するために不可欠な地質記録を作成する科学者たちの助けになるだろう。
(forbes.com 原文)