上級幹部が大胆なイノベーションと大胆な目標を好むというのは、ちょっとした定説だ。スティーブ・ジョブズの「宇宙にへこみをつくる」哲学を内心うらやましく思っているかどうかは別として、現実には、勇敢で大胆な革新を行う経営者は、投資家やビジネス誌、顧客などから賞賛を浴びるものだ。
目標設定に関する最近のLeadership IQの調査では、3分の2近くの幹部が、他の人が「大胆だ」というような目標を追求していると回答している。しかし、意外なことに、大胆な目標を掲げているマネジャーはわずか33%しかいない。これは、大胆な目標を追い求める現場の一般社員の37%よりも低い数字なのだ。
中間管理職は、「中間」から抜け出せないでいるようだ。ミスをしたら罰を受けるという不安と、大胆な発想を求める経営陣との板挟みになり、業務をコントロールすることと社員に力を与えることの狭間で、当然のことながら多くのマネジャーは慎重さと現状維持を選んでいるのだ。多くの組織では、優れた決断に対する報酬よりも、誤った決断に対する罰の方が大きい。さらに、人間は損失を嫌う性質があるため、潜在的にすばらしいイノベーションが中間管理職の机の上で死んでしまうのも不思議ではない。これは、中間管理職の人格を批判しているのではなく、むしろシステム的な問題の表れなのだ。
この問題を解決できる可能性があるのは、ノーベル賞受賞者でカリフォルニア大学バークレー校の細胞・発生生物学教授であるランディ・シェクマン博士の発言である。シェクマン博士は、私たちの細胞がタンパク質の輸送と分泌をどのように制御しているかを明らかにし、生命の化学に光を当てたことで受賞するなど、大胆な革新に取り組んでいる人だ。彼の研究は、非常に大胆で画期的なものだが、彼はまた、マネージャーがより多くのイノベーションを促進する必要がある企業に適したマネジメントアプローチにも磨きをかけた。
学術出版における名声は、特に『Nature(ネイチャー)』、『Cell(セル)』、『Science(サイエンス)』といったいくつかの雑誌によって支配されてきた。シェクマン博士は「これらの有名な雑誌は、最高の研究のみを掲載し、質の高さを象徴するものとされています。資金調達や任命の委員会は、しばしばどこで出版されたかを科学の質の代理のように使用することがあるため、これらの雑誌に掲載されると、助成金や教授職につながることが多いのです。しかし、大手学術誌の評判は部分的にしか正当化されません。大手学術誌は多くの優れた論文を出版していますが、優れた論文のみを出版しているわけではありません。また、優れた研究の唯一の出版社でもありません」と指摘している。