ロシアによるウクライナ侵攻は、ヨーロッパ域内だけでなく、ウクライナ産の食糧に依存する多くの途上国でも新たな難民問題を生み出した。こうした人道危機はそれ自体が極めて深刻なものだが、同時に、現代のエネルギー危機の知られざる一側面も生み出している。
ますます多くの人々が、送電網から強制的に切り離され、難民キャンプへの移住を余儀なくされている。そんななか、矛盾するようだが、こうした人々が利用できるエネルギーは極めて限られているにもかかわらず、彼らの1人あたりのエネルギー消費量は増加している。
言葉を失うようなデータがある。避難民のうち電源を利用できるのはわずか11%にすぎず、90%は安定的な照明にアクセスできない。深刻な非効率性、難民たちが基本的に必要とするエネルギーへの関心の欠如、そして不十分な人道支援政策のせいで、最悪の状況が生じている。エネルギーが難民にもたらす恩恵は減り続ける一方で、エネルギー使用量は増加しているのだ。
400万人超の難民、600万人の国内避難民が、すでにヨーロッパのエネルギーインフラを圧迫している。電圧低下や停電は、いまや東欧の送電網が抱える恒常的な問題となっている。難民たちの命綱である炊き出しの食事は、調理油の輸送や、非効率な小型調理器具の利用のせいで、1人あたりのエネルギー消費量を押し上げている。
冬になれば、断熱性の低いテントや収容施設、その他の「一時的」宿泊施設で過ごす利用者たちは、効率の悪い携帯用暖房や毛布に頼って暖を取るしかない。これらの大量生産と大量輸送にも、膨大なエネルギーが消費される。
当局が問題を解決できないなら、難民たちは自力でどうにかするしかない。残念ながら、組織化されていない団体行動がたいていそうであるように、結果は望ましいものとはいえない。