レバノンでは、死の危険を逃れてきたシリア難民が、「廃棄物、大気汚染、水質汚染、公衆衛生の深刻な悪化」を引き起こしている。同様にバングラデシュでは、ロヒンギャ難民が調理用の燃料を得るために1500ヘクタールの重点保護森林を破壊し、森林破壊や大気汚染が悪化しているだけでなく、100トン以上のし尿による汚染も発生している。ウガンダでは、コンゴ民主共和国と南スーダンからの難民が、間に合わせのエネルギーインフラをやむなく自力でつくりだし、これが難民と自国民の軋轢の原因となっている。
政府や国家間の対策が不足するなかで、少数ながらも、こうしたエネルギー問題に取り組む公共団体と企業によるイニシアチブが活動を始めている。NGO「プラクティカル・アクション(Practical Action)」は、IKEA財団やその他の人道支援NGOと提携しつつ、難民キャンプに持続可能なエネルギーへのアクセスを提供する「難民のための再生可能エネルギー(RE4R)」プロジェクトを展開している。
現在の活動国は、ルワンダ(ニャビヘケ、ギヘンベ、キガメ)とヨルダン(イルビド)だ。同プロジェクトは、総合的エネルギーアクセスの方針を採用し、「避難状況にある家庭、企業、コミュニティへのエネルギーアクセス」を提供している。
英国の王立国際問題研究所(チャタムハウス)は、官民のアクターからなるコンソーシアムとともに「ムービング・エナジー・イニシアチブ」を展開し、ヨルダン、ケニア、ブルキナファソの難民キャンプに、再生可能かつ持続可能なエネルギー源を提供するとともに、政策提言をおこなっている。
国際再生可能エネルギー機関(IREA)は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とともに、人道支援におけるクリーンで安価なエネルギー源の問題に取り組んでおり、UNHCRの「持続可能エネルギー世界戦略2019-2025」の策定にも携わった。同文書では、ソーラー・ミニグリッドを活用して避難民に電力を提供することが提案されている。
残念ながら、これらのすべての科学的解決策は、政治的影響力をほとんど持たない有権者のために、政治的意志と組織を必要としている。
難民問題は、エネルギー問題にも影響を与える。国際援助団体やドナーコミュニティがこのことに気づくのが早いほど、実践的な方策によって、両方の問題を解決に導ける可能性が開ける。物議をかもすテーマではあるが、難民のための長期的エネルギー計画を策定することは、帰国を早め、人道的介入の効果を高め、環境保全にも役立つのだ。
(forbes.com原文)