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2022.08.20 13:00

コロナ感染で上昇の精神・神経疾患リスク、2年後も高レベル

Getty Images

過去およそ2年間に新型コロナウイルスに感染した約130万人の電子カルテを分析した結果、新型コロナウイルス感染症と診断された人はその他の呼吸器感染症にかかった人と比べ、感染から2年がたった後も、認知症、脳の霧(グレインフォグ)、てんかん、統合失調症などの精神障害の症状を発症するリスクが高くなっていたことが分かった。

英精神医学専門誌ランセット・サイキアトリーに発表されたのは、米国を中心に各国の感染者の医療記録を分析した結果だ。感染がもたらす長期的な影響を(未成年者を含めて)より長い時間軸で調査した、初の大規模な研究の結果となる。また、異なる変異株の出現によってこうしたリスクがどのように変化したかについて、初めて調べたものでもある。

成人と未成年の違い


成人の感染者に特徴的な傾向は、感染から1〜2カ月後までにうつ病や不安神経症を発症するリスクが高まっていたこと。そして、そのリスクはこの期間を過ぎると低下するということだった。

未成年(18歳未満)は精神障害を発症する割合が大きく、てんかん、けいれんのリスクが特に高くなっていた。また、成人とは異なり、感染のすぐ後に不安障害やうつ病を発症するリスクが増大する傾向は見られなかった。

そのほか精神・神経疾患の発症リスクは、変異株のデルタ株が出現して以降、さらに高まっていたことが確認された。デルタ株が流行の中心になる以前と比べ、感染から6カ月後までの発症リスクは、不安障害が10%、不眠症が19%、ブレインフォグが38%、けいれんが26%上昇していた。ただ、認知症は唯一、大きく低下していた(ー40%)。

オミクロン株が主流となって以降も、これらを発症するリスクは上昇している。論文を発表した研究チームは、過去に流行した株ほど重症化のリスクが高くないとしても、ウイルスが体に大きな負担を与えることには変わりがなく、感染の影響は長く続く可能性があると警告している。

また、研究を率いたオックスフォード大学のマックス・タケット博士は、これらの結果には良いニュースと、懸念されることの両方があると指摘している。
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編集=木内涼子

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