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2022.09.09 08:00

ドラえもんを本気でつくる。大澤正彦が目指す「愛される」ロボット開発

AI研究者/日本大学文理学部情報科学科助教 大澤正彦

ドラえもんをつくりたい──物心ついた時からその夢を追いかけてきたのが、AI研究者の大澤正彦(29)だ。

その夢を本気で叶えるため、現在は日本大学内に次世代社会研究センター(RINGS)を立ち上げ、ドラえもんプロジェクトを進めている。

日本発「世界を変える30歳未満」の30人を選出するプロジェクト「30 UNDER 30 JAPAN」で、テクノロジー&サイエンス部門を受賞した大澤が目指す、「愛されるロボット研究」とは。


ドラえもんをつくりたい──ロボット研究者の大澤正彦は、物心ついた時からその夢だけを追いかけてきた。みんなに愛され、人間に寄り添ってくれるロボットはどうやったらつくることができるのか。

「ドラえもんプロジェクトとは、『みんなにドラえもんだと認めてもらうロボットをつくり出すプロジェクト』です。だから、このプロジェクトは『ドラえもんが好き』『未来をよくしたい』と思っている全員がチームなんです。ドラえもんができたときに、誰も僕の顔を思い浮かべなかったら成功ですね」

柔らかい物腰と謙虚な言動、おおらかな笑顔が印象的な大澤は、ロボット製作に没頭する幼少期を過ごした。

東京工業大学附属高校、慶應義塾大学理工学部をいずれも首席で卒業。そう聞くと、もともと天才肌の優等生を思い浮かべるかもしれないが、本人曰く「学生時代はずっとひねくれていた」。

あらかじめ用意された「正解」に無理やり近づけさせられているような感覚が我慢ならず、反抗したり、不登校になったりした時期もある。

「ドラえもんをつくりたいという純粋な気持ちを追いかけるのは大変で、同じ夢をもっている人も見つけられずずっと孤独だった」という大澤は、卒業後の進路について、企業での研究や起業など既存の選択肢のどれを選んでもドラえもんはつくれないと思った。

それなら「自分で新しい選択肢をつくるしかない」と、2020年に日本大学文理学部情報科学科の助教になり、大学の枠組みを超えた「次世代社会研究センター(RINGS)」を立ち上げた。

現在は約40人の研究員や学生とチーム体制での研究を進めている。

そのひとつで取り組むのは、「人と人の心」に特化した知能エンジンの研究だ。「共感」が発生するメカニズムを解明しプログラミングするという、まさに「人間らしさ」の研究でもある。

「AI開発は得体が知れないと思われている現状がある。だからこそ、オープンにして世論と一緒に歩んでいくべき。愛されるドラえもんをつくるため、愛されるための努力も誠心誠意やっていきたい」

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おおさわ・まさひこ◎1993年生まれ。日本大学文理学部情報科学科 助教。次世代社会研究センター(RINGS)長。博士(工学)。IEEE Young Researcher Awardをはじめ受賞歴多数。孫正義育英財団1期生。認知科学若手の会を設立、元代表。

文=堤 美佳子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.098 2022年10月号(2022/8/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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