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2022.09.06

愛は老化を遅らせるか。犬と人間の長寿への挑戦

Getty Images

2021年秋、北米版「Forbes 30 Under 30 2022」に選出されたセリーヌ・ハリウア(27)。愛犬家である彼女は、19年に犬の寿命と健康寿命を延ばすことを目的とした治療薬を開発する企業Cellular Longevityを設立。老化を遅らせたりがんを防ぐ化合物を特定することを目指している。

現代の一般的な犬の寿命は十数年と短く、10歳を過ぎると半数以上ががんにかかったり、人間と同様に白髪、難聴、視力低下、物忘れなどの問題を抱えたりするとされる。ペットとして大切な家族の一員ともっと長く健やかな時間を過ごしたい一心から、ハリウアは犬の健康寿命を延ばす方法を見つけるミッションに取り組んでいる。

今年から臨床試験に入る犬用の老化予防薬は、加齢に伴う衰えを緩和すると仮定される細胞を使用する。

「いまだ犬でも人でも、老化に効果があると認められ実用化した薬はありません。私の目標は、その最初の薬を承認させることです」

犬での実験に成功すれば人間にも応用できることが期待され、合計3800万ドル以上の投資を集めている。19年から現在までに、会社は3人から60人以上に成長。加わった獣医師や科学者たちとともに、老化メカニズムを研究する。

日本では昨年、多くの猫が発症する腎臓病の治療法を東大の宮崎徹教授が開発したことも話題に。愛犬・愛猫とより長く暮らせる世界がそこまで来ている。


セリーヌ・ハリウア◎米テキサス州生まれ。Cellular Longevity のCEO。テキサス大オースティン校で神経科学、オックスフォード大で遺伝子治療学を専攻し老化の解明とその治療法の研究を行う。北米版「Forbes 30 Under 30 2022」に選出。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ゲリン・ブラスク

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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