「安全策があるのは良いことだが、米国のチップメーカーは、中国ではレガシー半導体しか作っていないので、大きな違いはないと思う」とフェリーは話す。「中国に工場を持てば、知的財産の盗難は日常茶飯事だと知っているからだ」
中国製品のリスクを検証するウェブサイト「China Tech Threat」を運営し、Forbesの寄稿者でもあるロズリン・レイトン(Roslyn Layton)はフェリーとともに、2022年6月の記事「Silicon Sellout」で、アップルと長江メモリの提携について書いた。
その2カ月後の8月1日、ロイター通信は、米国政府が長江メモリを含む中国のメモリチップメーカーへの米国製チップ製造装置の出荷を制限することを検討していると報じた。中国の半導体部門の進化を食い止め、米国企業を保護することを目的にした動きだ。
アップルと長江メモリのような提携関係は、「CHIPS and Science Act」新法の「Science(研究開発)」部分における最も大きなリスクであり続けている。
CHIPS法では、企業が、助成金やその他のインセンティブを使って、米国以外の海外市場でレガシー半導体を作ることは認められている。ただし、すでに海外にファブを持ち、それを拡張する場合や、米国への輸出を目的とせず、海外市場だけにサービスを提供する場合、という条件がある。
もうひとつ、不明確な点がある。公的資金が枯渇した場合、企業が方針転換して米国内のファブを操業停止にし、アジア企業への生産委託という旧モデルに回帰することを選ぶ可能性はあるかもしれない。これが恒久的に繰り返される可能性もある。
中国は、この分野でより大きなプレーヤーになりつつあるが、米中が敵対関係にあることから、米国のチップメーカーにとって、中国で高度なチップを製造することは重大な地政学的リスクとなる。