米で成立の半導体産業支援法、中国に利する抜け穴も

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半導体メーカーは、バイデン米大統領が8月9日に署名し成立した「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)を歓迎している。これにより、半導体製造工場(ファブ)の建設に527億ドルが投入される。重要なグローバル産業のサプライチェーンを米国内にローカライズするために、無料で提供される資金だ。これを歓迎しないわけはない。

助成金の用途は、米国内でのファブ建設に限定されている。そのファブではあらゆる種類のチップを製造できるが、主な対象は、ハイエンドな先端チップとそのチップを作る機械だ。現在のところ、米国はチップと製造機械を設計し、その知的財産を維持しつつ、製造は台湾、韓国、日本、そして最近では中国に外注している。

ホログラムフォン


「ホログラムフォン」はまだ実現されていない。だが、いずれはできるだろう。どこで発明されるだろう? 米国なら、どこで作られるだろう?

アップルがスタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者と提携して、作るかどうかを検討することは想像できる。そして、スタンフォード大学やMIT、あるいはアップル自身が、助成金を使って、北京大学の研究者やアップルのパートナーである長江メモリ(YMTC)と提携するかもしれない。現行の半導体法の下では、このような事態を止められない。

CHIPS法は、中国との技術競争に備えた総額約2800億ドルの法律であり、そのなかに、半導体産業への資金援助527億ドルが含まれている。米議会でCHIPS法成立への反対があったのは、主に新技術研究に投入される約2000億ドルという新しい連邦助成金に(資金を国外に流出させないための)安全策がないことに起因する。

「このCHIPS法は、20年間に渡ってアジアに奪われた半導体製造能力を補うために、我々がしなければならないことだ。しかし、これはスタート地点に過ぎない」と、ワシントンのシンクタンク「Coalition for a Prosperous America(繁栄するアメリカ連合)」のチーフエコノミストであるジェフ・フェリー(Jeff Ferry)は言う。
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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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