ビジネス

2022.08.17

図書館に「自分だけの本棚」を持てる。静岡発の一箱本棚オーナー制度とは

焼津駅から徒歩5分、静かな商店街に人々の居場所が現れる


現在の「公共」は消費者民主主義的であり、市民がお客さま化している。自治体が縮小し、これまで当たり前のように享受できていた公共サービスを維持できなくなっていく時代はすぐそこまできている。土肥氏は「お客さま的な意識から抜け出せなかった街は、未来がなくなってしまう」と危機感を持つ。

「一方で、企業の風向きは変わってきていると感じています。地元の企業が、自分たちの街は自分たちで作っていかなければいけないという意識で、公共に対して目を向け始めてきている感覚はあります。『一箱本棚オーナー制度』にも、企業の方からの問い合わせが増えています」

それを受けて、さんかくの今後をどう見ているのだろうか。

「自分たちの街は自分たちで担っていこうよとか、ここは自分たちの街だよねと感じられるような、やわらかい場所でありたいですね。そして、緩やかに移行していきたい。そのためにも、さんかくは、場としてあり続けられるようにしていこうと思っています。もうすぐ開設して3年が経つので、私が主体にならずとも、さまざまな人に担われていくような場になるような仕掛けも考えていきたいですね。」

小さな公共圏が広がっていくことで、私たちの意識が変わっていく。そして、街のあり方が変容していく。「一箱本棚オーナー制度」の広がりに、一筋の希望の光が見えた。



土肥 潤也(どひ・じゅんや)◎みんなの図書館さんかく館長。1995年、静岡県焼津市生まれ。早稲田大学社会科学研究科修士課程修了、修士(社会科学)。2015年に、NPO法人わかもののまちを設立。2020年に、一般社団法人トリナスを共同創業、現在は代表理事。焼津駅前通り商店街をフィールドに、完全民営の私設図書館「みんなの図書館さんかく」を開館。内閣府若者円卓会議 委員、子供・若者育成支援推進のための有識者会議 構成員などを歴任。

文=佐藤祥子

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