低所得国でのHIV予防注射の普及支援に、国連支援団体が合意

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国際健康機関ユニットエイド(Unitaid)は2022年7月28日、国連が支援する公衆衛生団体「医薬品特許プール(MPP)」が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の革新的な予防薬へのアクセスを促進する取り決めに署名したことを発表した。この歴史的な取り決めによって、AIDS(後天性免疫不全症候群)の形勢が一変し、多くの命が救われるかもしれない。

この取り決めに基づいて、HIV/AIDSを専門とするヴィーブヘルスケア(ViiV Healthcare)が、貧困に苦しむ国々で、HIV薬の開発・製造・供給ができるボランタリー・ライセンスを提供することになる。ヴィーブヘルスケアは、製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)、ファイザー、塩野義製薬の資本参加によって生まれたベンチャー企業だ。

MPPは、資格を満たしたメーカーと協力し、90カ国でHIV薬のジェネリック版を安価に生産できるようになる。2020年にはHIV新規感染の70%以上が、それら90カ国で発生している。

このHIV薬は、長時間作用型(LA)のカボテグラビルだ。注射が可能なPrEP(pre-exposure prophylaxis:暴露前予防内服)で、1度接種すれば、HIVへの予防効果が2カ月続く。この方法なら、PrEPの他のタイプの服用普及を妨げている要因を克服できる可能性がある。

PrEPは、高い効果を持ったHIV予防薬だ。しかしごく最近までは、経口薬というかたちでしか利用できなかった。経口薬は、スティグマ(負のイメージ)や服薬の順守といった課題があり、その有効性は限られている。

PrEPは、開発された当初、AIDSを発症させるHIV感染を予防する上でのゲームチェンジャーだと評価された。米疾病予防管理センター(CDC)によると、PrEPは毎日必ず服用するタイプの薬で、HIV感染リスクを劇的に減少させ、その効果は最大99%だという。

それほど一般的ではないが、PrEPの別の服用方法としては、セックスなどリスクの高い行動をとるときに、オンデマンドというかたちで服用されることもある。HIVに感染するリスクがある人のうち、経口タイプのPrEPを利用する人は比較的少ない。その理由はさまざまで、薬代の捻出や入手の難しさ、普及の遅さに加え、効果を得るにはきちんと服用する必要があり、それが適さない人もなかにはいる。

しかし、注射が可能で長時間作用するPrEPであれば、そういった問題の一部を克服できる。ヴィーブヘルスケアの注射薬は2021年12月、米食品医薬品局(FDA)によって、米国での使用が承認された。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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