世界三大酒類コンペで入賞、老舗酒蔵がつくる「みりん」は海外へ羽ばたく

(左)Me-無濾過生原酒-おりがらみ(右)Me-無濾過生原酒


なるほど、まさか日頃から自分がお世話になっている居酒屋のルーツがここにあるとは、思いもしなかった。木村さんの口からは、さらに驚きの事実も語られた。

「いま、お祝いの席で鏡開きってやるじゃないですか。あれはもともと、戦の時に武将が自分の部下たちの士気を上げるために酒を振舞ったのが始まりと言われています。でも、江戸時代になって、戦がなくなり、鏡開きも行われなくなった。そこに目をつけたのがやはりうちのご先祖さまで、お祝いの席で鏡開きをやりはじめたそうです」

この2つのエピソードだけでも十分に驚かせてくれるが、豊島屋伝説はまだまだ尽きない。昔、灘からの酒は樽に入れられて江戸に運ばれていた。そして当時はその樽自体が貴重品だった。豆腐田楽で客の心を掴んだ豊島屋では、酒が大量に売れるので、樽もどんどん空いていく。そこで豊島屋は、その樽を醤油蔵や味噌蔵などに転売し、そこでも利益を得ていたというのだ。そう、リサイクルの走りである。

「白酒もそうですし、こういった豊島屋の歴史を知っていくうちに、『ご先祖さまってすごいぞ!』と思うようになり、仕事に対する興味も深まっていったんです」

そんなアイデアマンたちの血を受け継いだ木村さんは、ご先祖さまたちに負けず劣らずの発想と行動力で、Meとともに世界に打って出ようとしている。

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神田豊島屋の木村倫太郎さん

「みりんは免許も限られているので、他社と差別化ができます。それに、糖分が高く、かつアルコール度数もしっかりあるので、生原酒であっても常温で出荷できるのも強みです。それらの特徴を生かして、海外への輸出も視野に入れています。現在はオーストラリアへの輸出が決まっていて、これから欧米にも進出したいと考えています。

Meをそのまま飲むのはもちろんですが、アルコール度数も14度あって、酸も尖っていないので、カクテルとして使ったら面白いのではという考えも浮かびました。ちょうど、幼稚園からの同級生にバーテンダーとして日本一になった友人がいて、彼にも相談に乗ってもらっているのですが、Meの持ち味である『日本の甘み』を生かして、和テイストのカクテルもつくりやすくなるのではと考えています」

木村さんの目論見通り、最近では日本国内でもバーでの取り扱いも増え、各地でみりんのカクテルを楽しむことができるようになってきた。今後はネット販売にも力を入れるとのことで、Meから広がるみりんの輪はますます広がっていきそうだ。

文=鍵和田昇

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