世界三大酒類コンペで入賞、老舗酒蔵がつくる「みりん」は海外へ羽ばたく

(左)Me-無濾過生原酒-おりがらみ(右)Me-無濾過生原酒

東京の酒蔵が手がける「みりん」が、いま世界の注目を集めている。「神田豊島屋」がつくる、飲むみりん「Me」だ。

麹のリキュールを謳い2021年にリリースされたMeは、今年、みりんとして史上初めて、世界三大酒類コンペティションと言われるIWSC(インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション)、ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)、SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション)の全てでメダルを受賞したのだ。

「みりんなのに、酒類なの?」と思われる人もいると思うが、みりんには14%ほどのアルコールが含まれている。そもそも、みりんが現在のように料理に使われるようになったのは、江戸時代中期の話。みりんが誕生した室町時代には、高級酒として扱われていたという。

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Meを使ったカクテル

すべて麹由来のまろやかな甘さ


世界の酒のプロたちから高い評価を受けたMe。それをプロデュースしたのが、神田豊島屋の木村倫太郎さんだ。日本酒愛好家が「豊島屋」と聞くと、日本酒の「屋守」を思い浮かべると思うが、屋守を醸すのが「豊島屋酒造」。神田豊島屋はそのグループ会社にあたる。

もともと豊島屋は、1596年に神田で創業した。創業当時は、酒どころとして知られる関西の灘から酒を仕入れて、店先で販売していたという。時は、安土桃山時代。当時の酒といえば、男だけが口にするもので、女性はあまり酒を飲めなかったそうだ。

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製造過程

そんな時代に、豊島屋の初代が「ひな祭りくらいは女性もお酒を飲んでもいいのでは?」ということで考案したのが、みりんに餅米をすりつぶして混ぜる甘いお酒、「白酒」だと言われている。童謡「うれしいひなまつり」の歌詞に出てくるあの白酒である。白酒は、歌舞伎や浮世絵にも登場するなど、当時の人々に愛されてきた。

豊島屋とみりんの関係は、その時から始まる。みりんの製造には、酒と同様に免許がいるのだが、いま東京都内でみりんの製造免許をもっているのは、豊島屋だけだ。木村さんはそのみりんに目をつけ、Meを誕生させたのだ。

先ほど書いたように、みりんはもともと高級酒であった。しかし現在は、料理用ばかり。木村さんは、「美味しく飲めるみりんをつくりたい」という思いを抱いていた。そのきっかけとなったのが2017年。日本酒の営業でフランスを訪れた木村さんが目にした、フランス人が男女問わず甘いお酒を飲んでいる光景だった。木村さんが語る。

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「世界では、甘い酒も受け入れられるんだなぁと意を強くしました。なら、みりんにもチャンスはあるのではと考えたんです。豊島屋はみりんを使った白酒を提供してきた歴史もありますし、蔵の原点、酒造りの原点ということで、あらためてみりんを見直したいと思ったんです」
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文=鍵和田昇

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