これらに基づいた分析の結果、週当たりのアルコール摂取量が「中程度」の人たちは、摂取量が「少ない」または「ゼロ」の人と比べて、脳と肝臓の鉄の蓄積量が多いことが分かった。
一方、研究チームは参加者たちの認知気機能や運動機能について、客観的、主観的に判断しうる調査(短期記憶のテストや歩行速度についてのアンケートなど)も行った。だが、いずれについても、低下していることを明確に示す結果は得られなかった。
そのためチームは結果について、「脳内の鉄の蓄積は、病気の可能性を示す初期のマーカーであり、参加者たちは臨床症状がみられる前の段階にあったと考えられる」と述べている。
研究者らは、こうした結果の重要性を指摘するとともに、これが予備的なものにとどまることを認めている。脳内の鉄の蓄積には、年齢や食習慣、遺伝など、多岐にわたる要因が関わっている。また、今回の研究にはアンケートの回答に基づくデータが使用されたが、生活習慣に関しては特に、そうした情報は固有誤差の要因となりうるものだ。
とはいえ、この研究結果は、アルコール摂取と脳内の鉄の沈着の関連性について行われた、初めての大規模な調査に基づくものだ(ただし、関連性が示されたのみで、因果関係はまったく明らかにされていない)。
脳内の鉄の沈着が神経系疾患と関連していることはすでに知られており、それらの疾患の大半は、アルコール摂取とは無関係とみられている。だが、この新たな調査は、アルコールの摂取だけでも脳内に変化は起きており、それが従来考えられていた以上に早い時期から、かなり少ない量でも起きていたとみられることを明らかにしている。