教育政策で先行する北欧や、工場労働者をナレッジ・ワーカーとみなす日本ならば、新しい社会契約の実現は可能かもしれない、と希望を託す。
「創造性はイノベーションと経済成長の源だ。時代の流れは、人間の創造性をますます重視していくだろう。歴史の矢はヒューマニティや平等を重視したよりよい社会政策に向かうが、直線的には行かない。まず北欧で始まり、他国に拡散していくのかもしれない」。
若いころはギタリスト志望で、自身のことを、物事を検証するのが仕事のいわゆる「学者」ではなく、直感を大切にしてデータから物事を探求するタイプだと話す。もしこれから本を書くとすると、ひとつは「郊外」について、そしてもうひとつは「現代社会の階級構造」についてだという。
「現代社会では、わずか0.001%の資本家が生産手段をコントロールし、莫大な資本を蓄えている。もちろん、富や起業へのインセンティブは必要だが、問題が多い。我々はより平等で包括的な社会を構築する必要がある。クリエイティブ・クラスは成長する階層であり、資源をもち、力もある。自己完結的ではなく、社会の一員を自覚して、社会政策による底辺の底上げをし、資本家へのカウンターバランスの役割を担うべきだ」
Richard Florida
リチャード・フロリダ◎、米国ニュージャージー州生まれ。1986年コロンビア大学で博士号取得。専門は都市社会学。トロント大学ビジネススクール教授。自治体や企業に対してコンサルティングや講演を行うシンクタンク「クリエイティブ・クラス・グループ」創業者。本文で紹介した著書のほか『クリエイティブ・クラスの世紀―新時代の国、都市、人材の条件』(井口典夫訳、ダイヤモンド社、2007年)などがある。