ビジネス

2022.08.06

空き家問題と地域の活性化、SEKAI HOTELがめざす体験型の宿泊施設

世代、国籍、地域住民、観光客、すべての人が分け隔てなく楽しむ「お祭りの夜」を表現したSEKAI HOTELのビジョンアート


商店街で働く1人1人が、宿泊者の体験と関わるため、スタッフがホテルのコンセプトを深く理解して、地域の人たちに伝えていくことも重要となる。スタッフに対しては、商店街のこれまでの歴史を学ぶ時間を設け、また入社時にはカメラを持ち商店街を歩くことで街の魅力を発見するきっかけをつくっている。

宿泊料金の一部を活用して、地元の子供たちが無料で参加できるイベントも定期的に開催している。商店街の人たちとスタッフの接点の積み重ねが、結果として宿泊者のサービス品質の向上や宿泊者の満足度にもつながっているという。

商店街にリノベーションしたホテルという「ハコ」をつくるだけでは不十分だ。ホテルと商店街の双方が一体となって宿泊客に魅力を届けることが重要となる。その効果もあってか、観光地でもない布施に「SEKAI HOTELをきっかけとして遊びに来る人たちも増えてきた」と矢野は嬉しそうに語った。


SEKAI PASSを持参すると宿泊客は商店街の銭湯「戎湯」に無料で入浴できる

「まちごとホテル」という構想は、空き家問題だけではなく、シャッター商店街を活性化するための新しい切り口としても注目を浴びている。近く3号店となる「SEKAI HOTEL高岡」を初めて府外の富山県高岡市にてオープン予定だ。今後もこの取り組みが、地域活性化のひとつのモデルとして、日本中に広がっていくのが楽しみだ。

連載:「遊び」で変わる地域とくらし
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文=内田有映、取材協力・写真提供=SEKAI HOTEL Inc.(矢野浩一、久米佑宜)

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