ビジネス

2022.07.26

ついに日本に上陸 時価総額世界3位の中国EVメーカーの勝算

BYD ジャパン 代表取締役社長 劉 学亮


F:前出のヒョンデは、実店舗を設けず、オンライン販売を展開している。EVで先行するテスラもオンライン販売が主力だ。なぜBYDはオンライン販売にしなかったのか。また当面の販売目標も聞かせてほしい。

:オンライン販売の予定は今のところない。しっかりと対面式の、安心感のある形で販売していきたい。クルマのような高額商品は信頼感が大事だ。売る人の顔が浮かんでくるような売り方でないと、なかなか信頼感は醸成できないのではないか。ただ、販売目標は現時点では公表できない。

F:ディーラー網の整備計画は。

:25年までに100店舗を整備することを目指している。できればすべての都道府県にディーラーを設けたい。そのために現在、多くの日本の企業と話をしているところだ。

発表会での写真
発表会で並ぶ劉社長と販売を担うBYD Auto Japan代表取締役社長 東福寺厚樹(右)。東福寺は長らくフォルクスワーゲングループでその販売会社のトップにいた。日本の市場をよく知る人物だ。

F:日本市場で後発のBYDは、何を「強み」に日本で売り込んでいくのか。

:安全性だ。EVの安全性に不安を持っている消費者はまだ多い。多くの自動車メーカーは他社からバッテリーを購入するのに対して、当社は先ほども触れたように自社でバッテリーを製造している。しかも原材料から自社で調達しており、安全性には絶対の自信を持っている。

F:BYDの価格競争力は高い。現在日本では日産自動車の軽自動車EV「サクラ」がEVとしては驚異的なペースで受注を延ばしているが、例えば今回日本に導入されるコンパクトハッチバックのEV「ドルフィン」の中国での価格を見ると、サクラよりも大容量バッテリーを積み、大出力のモーターを搭載するにもかかわらず、11万1316〜14万3254中国元(1中国元=20円換算で222万6320〜286万5080円、補助金抜きの価格)に設定されている。これはサクラの約240万〜300万円より安い。中国での現地価格に近い価格で販売されれば、日本のメーカーにとって脅威になりそうだ。

:日本での販売価格はまだ言えないが、日本の消費者に手の届きやすい価格を実現したい。単にクルマを販売するだけでなく、残価設定ローンやサブスクリプションといった多様な購入方法、専用の保険、アクセサリーを用意する。さらに潜在ユーザーに長期にわたって当社EVを貸し出し、SNS上にその体験を投稿いただくようなプロモーションも実施する。ぜひ多くの方に、BYDが提供する「e-Life」を体感していただきたい。

BYDは、2023年1月に発売予定の『ATTO 3」を皮切りに、23年中頃に「DOLPHIN」、下半期に「SEAL」の発売を予定。

文=鶴原吉郎 写真=西川節子(人物)

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