ザッポスCEOトニー・シェイ「21世紀型組織」の作り方




(中略)
例えば、ジョーク好きな顧客係はジョークで顧客を楽しませる。電話先の顧客の背後から犬の声が聞こえてきたら、犬の話題をして顧客とのつながりをつくる。家族が亡くなった顧客には花を贈る。サイト上では商品の翌日配達を約束してはいないが、翌日に届けてサプライズを与える。事務的になりがちな顧客サービスにパーソナルな要素やサプライズを入れ、顧客をハッピーにするのである。
実際、私も、同社のハイ・タッチなアプローチにハピネスを感じたことがある。ある年末のこと、帰国直前、寒い日本で身につけるためのブーツを購入したが、届いたブーツがやや大きめだった。サイズがひとつ小さいブーツと交換してもらっていたら帰国には間に合わない。そんな事情をカスタマー係に相談すると「帰国に間に合うように小さいサイズのものを送ります。大きいサイズと履き比べて、アメリカに戻ってきたらどちらか一方を返品してくれればいいです」と言って、小さいサイズのブーツを特急で送ってくれた。聞きながら、カスタマーの中には一方を返品しない人もいるのではないかと思った。しかし、彼女は自由裁量でカスタマーを信頼して、そんな対応を取ったのだろう。(中略)また、同社が面白いのは、新入社員トレーニング開始から1週間後、「コア・バリューに合わないと思ったら、退職ボーナス4,000ドルを出すので、やめてもいい」と明言していること。これは一種のテストだ。新入社員がお金のためだけに働く社員なのか、それとも、同社の長期的ビジョンを信じて、企業文化の一翼を担うことができる社員なのか試しているのである。同時に、4,000ドルは、やめていく社員が自分に合う次の仕事を見つけるまでの生活費にもなる。社員は単なる労働者ではなく家族の一員、ハッピーな気持ちで退社してほしいという“ファミリー・カルチャー”の表れともいえる。しかし、実際のところ、やめる社員は1%にも満たない。
シェイが提供するハイ・タッチな顧客サービスもコア・バリューを重視した企業文化も目指すところはひとつ、ハピネスの拡散だ。顧客、社員、ベンダーはもちろん、異業種や他社へも同社の“ハッピー文化”を広げていくことである。
(以下略、)

飯塚真紀子

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