ロシアと中国は奇妙なカップルだ。米英のような心の通ったパートナーシップではまったくない。特筆すべきは、中国の経済規模がロシアの約9倍で、経済的には米国の方が中国に提供できるものが多いことだ。中国やインドが今、安く手に入れることができるロシアの石油やガスを欧州諸国は敬遠している。しかし、ドイツと違って、中国とインドはロシアと距離を置いてリスクを分散させることを知っている。
米コロンビア大学グローバルエネルギー政策センター上級研究員のエリカ・ダウンズは、アトランティック・カウンシル主催のシンポジウムで「中国は強者の立場で(ロシアと)交渉することができる」と述べている。「しかし、中国は西側の制裁に巻き込まれたくはない。中国企業は化石燃料の輸入を増やしている。これはロシアにとってウクライナでの戦争を支える収入となる。しかし、中国がロシアに多くを提供しているとは思えない」
ロシアは国家予算の60%を炭化水素に頼り、石油とガスは国民総生産の3分の1近くを占めている。
短期的には原油価格の高騰がロシアに力を与える。ロシアは中国やインドに石油を30%引きで供給することができる。ブルームバーグの報道によると、ロシアは2月24日のウクライナ侵攻以来3カ月で240億ドル(約3兆3412億円)を稼いだという。中国は石油とガスに190億ドル(約2兆6451億円)近くを費やしており、これは1年前の2倍だ。
一方、インドは50億ドル(約6961億円)を支払ったが、これは昨年の5倍だ。石油が安いことが動機となっている。インドはロシアからほとんど何も輸入していなかったが、毎日100万バレルのロシア産石油を輸入するようになった。しかし、これ以上は必要ではなく、1日35万バレル程度だ。
さらに、中国とインドの石油購入量は現在の欧州の購入量より少ない。欧州は今年、船で到着する石油を禁止しているが、パイプラインで送られる石油は段階的に減らしている。その禁止令が浸透してくると、ロシアは自国を維持するために石油をさらに値引きする可能性が高い。しかし、そのような戦略は短命に終わるだろう。
中国の輸入の約4分の3は石油絡みだ。そして、中国は最も良い取引を獲得しようと考えている。米国の前大統領ドナルド・トランプが関税戦争を始める前から、中国はロシアに頼っていた。貿易の敵対行為はその傾向を加速させた。そしてロシアは喜んでそれに応じた。2005年には中国の石油の5%を供給したが、今年の中国への原油輸出は昨年に比べて55%増えた。中国のシノペック(中国石油化工)やZhenhua Oil(鎮花油)が主な買い手だ。
プーチンは常習的なギャンブラー
アトランティック・カウンシル主催のシンポジウムで、戦略国際問題研究所エネルギー安全保障・気候変動プログラムのシニアアソシエイトであるエドワード・チョウは「ロシアは石油とガスを合わせた最大の輸出国であり、中国は最大の輸入国だ」と話した。「ロシアと中国が提携するのは自然なことだ。しかし、戦争が提携をより複雑にしている。確かに中国の輸入は増えたが、大幅な値引きをしている。中国はこれを利用した。中国は(ロシアの)プーチン大統領を信頼できず予測もできない人、そして無能と見ているのかもしれない」