ロシアと中国の間には激動の歴史がある。1890年代の第一次日中戦争後、ロシアは満州に侵攻した。そして1969年には中国とロシア(ソ連)は国境を巡って珍宝島で戦った。
しかし、現在の中露の友好関係は長くは続かないだろう。矢野経済研究所によると、中国は2060年までにカーボンニュートラルを実現すると宣言している。この戦略は、中国が世界のほとんどのソーラーパネルを製造し、電気自動車のバッテリーに使われる電極や電解液・電解質、セパレーターといった重要な原材料を管理しているという事実を中心に据えている。また、中国は世界の電気自動車の4分の1を有する。
同時に、中国と米国はこのところ課題は抱えているが、1973年から国交を結んでいる。米国の多国籍企業は今も中国市場に進出している。アップル、ボーイング、キャタピラー、マイクロソフト、テスラなどだ。さらに、中国はシェニエール・エナジーやベンチャーグローバルLNGといった米国の液化天然ガスサプライヤーと長期契約を結んでいる。
「プーチンはウクライナとの長い紛争を抱えている」と、タフツ大学フレッチャー校気候政策ラボのマネージングディレクターであるエイミー・マイヤーズ・ジャッフェはセミナーで話した。欧州の経済的痛みや米国のガソリン価格高騰を考えると、「プーチンは自国が有利だと考えている」としながらも、電気自動車やエネルギー効率化など、21世紀のテクノロジーは最終的に石油の使用量を減少させる画期的なものだとジャッフェは指摘する。
また、ロシアは現在生産している石油の多くを国内経済や戦争の燃料として必要としているため、すべてを売ることはできないとジャッフェは話す。
アトランティック・カウンシルのジオエコノミクスセンターのフェロー、ブライアン・オトゥールは「長期的には、戦争は中国とインドにとって多角化の必要性を強調するものだ」と指摘する。
プーチンは、世界市場における石油とガスの高値に賭けている。しかし、西側市場がロシアの商品を締め出すにつれ、その利点は薄れていく。「プーチンは常習的なギャンブラーであり、止め時がわからない」とオトゥールはいう。「プーチンは必要以上に賭けに出るかもしれない。メディアを支配すれば、プロパガンダは簡単だ。ロシアでは中産階級がどんどん蒸発している」
ロシアと中国は政略結婚している。中国は今、ロシアに巨額の利益をもたらす石油を割安で手に入れている。しかし、中国とインドも西側諸国と強い結びつきがある。石油やガスへの飽くなき渇望はあるが、ロシアと将来を共にすることはないだろう。
さらに、欧州諸国がロシアの石油・ガスを排除し、新たな供給者と長期契約を結ぶと、ロシアは自らの使命と地政学的目標を見直す必要がある。ソビエト連邦を再建し、国際秩序の一翼を担うことはできない。