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2022.08.07

世界に例を見ない日本のデジタル通貨は浸透するか? DXと「お金の未来」

Illustration by Booblgum

銀行預金をベースとするデジタル通貨プロジェクトが日本で進んでいる。開発中の「DCJPY(仮称)」は、日本社会にどのようなインパクトをもたらすのだろうか。前回に引き続き、デジタル通貨フォーラムの事務局を務めるディーカレットDCPで本プロジェクトを率いている時田一広氏との対談をお届けする。

メタバースやNFTに対応する、Web3時代の「お金」の姿


アクセンチュア 武藤惣一郎(以下、武藤):お金の流れが変われば、モノの流れも変わります。お金の変革が流通革命にも繋がるという未来が想像できます。デジタル通貨は金融機関にとって新たなビジネスチャンスとなる反面、それによって失われる既得権益や破綻するビジネスモデルも出てくると考えられますね。

ディーカレットDCP 時田 一広氏(以下、時田):ありえます。カニバリゼーションを起こすビジネスもあるでしょう。しかし金融機関の方々も、ビジネスモデルを進化させなければならないという危機感を強くお持ちです。デジタル通貨は銀行業の根幹に関わるものですから、高度な経営判断が求められます。だからこそDCJPYは金融業界全体のプレイヤーを巻き込んだプロジェクトとして取り組んでいます。

時田氏の写真
ディーカレットDCP 時田一広

デジタル通貨は、既存の産業構造のデジタル化のためだけのものではありません。メタバース内の土地を取引したり、NFT(非代替性トークン)でアート作品が売買されたりする時代ですから、仮想空間上に構築される環境に適した決済手段が不可欠です。インターネット上の価値が実際のお金と連動していれば、支払いのたびにリアルワールドに戻る必要がなくなります。DCJPYはWeb3.0時代の社会課題を解決する力を持っています。

武藤:DCJPYは産業構造をトランスフォームさせ、社会全体を新陳代謝していく力を持っていることがよく分かります。

DCJPYによって、日常生活はどう変わるか


時田:次に個人消費者について考えます。昨今、電子マネーなどキャッシュレス決済手段は増え、とても便利になりました。しかしこれらの仕組みには「相互運用性」がありません。チャージした交通系ICカードからQRコード型電子マネーへ残高を移して支払うことができないことがその一例です。

ですが裏側にデジタル通貨があれば話は変わってきます。キャッシュレス支払いは、いわば決済のインターフェースです。デジタル通貨とリアルタイムで繋がれば、チャージのようなお金をプールする手段を間に挟まなくても、預金とダイレクトに結びついた決済手段として使えます。

武藤:チャージという概念自体がなくなるわけですね。こうした仕組みは海外ではすでに出てきていますね。

時田:そうですね、銀行預金のデジタル化という点では、海外のデジタルバンクに先進事例があります。DCJPYの考え方や構想そのものが斬新と言うわけではありません。

DCJPYの革新性は、複数の銀行が1つのブロックチェーンの基盤に参加するという仕組みを提供している点です。DCJPYでは、この基盤を「共通領域」と名づけています。共通領域では銀行がノード管理者となり、基盤全体が1つのブロックチェーンで運用されます。これは世界的にも前例のない仕組みです。

共通領域はまさに新しい金融インフラです。しかし、金融インフラだけが存在しても、世の中は何も変わりません。「どのように使うのか」、「どのような場面で利便性が発揮されるのか」。こうしたこととセットでなければなりません。それを担うのが、先ほど(※前編)プログラマビリティとして説明した「付加領域」です。
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文=アクセンチュア

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