現状では、電子マネーやGAFAなどが提供するサービスに対し、第3者企業が追加機能を開発し、実装することは不可能です。ある程度の連携はできますが、いわゆるアドオンにすぎません。しかしDCJPYのプラットフォームはオープンであり、各社はビジネススピードを加速させるプログラムを独自に実装できます。
DCJPYが世界に類を見ない特徴は、このような共通領域と付加領域の「二層構造」を持っている点です。通貨として安心して利用できることに加え、付加領域を活用してビジネスロジックの新規構築やデータ活用の幅が広がります。
その価値を高めるためにも、業界横断の組織であるデジタル通貨フォーラムが軸となって具体的なデジタル通貨の活用領域や新たなビジネスモデルの検討を進めています。フォーラムではすでに10個ほどの分科会で業界ごとに実証実験が進行中です。
「支配的な企業が管理するプラットフォーム」ではなく、「相互に連携しながら活用していくDCJPY」は、オープンイノベーションの世界観を持っています。法定通貨のデジタル化は間違いなく社会にとって必要な変革であり、公共性の高い事業です。
このプラットフォームは、いわば「参加する場」です。いろいろな企業がアイデアを形にしてプラットフォームへ実装することでエコシステム全体が成長していきます。加えて、他社が作り込んだ機能を利用する参加形態もあるでしょう。スマートコントラクト(ブロックチェーンの活用による契約のデジタル化)やマーケットプレイスといった機能が有用なツールになると考えています。
Forbes読者の多くはビジネスパーソンでしょうから、ご自身が担当されているビジネスや業務がDCJPYでどのように変わるのかをイメージしていただくのもその第一歩でしょう。
電力取引、地域通貨……進む実証実験
武藤:現在具体的に検討を進めている取り組みとしては、どのようなものがありますか?
アクセンチュア武藤惣一郎
時田:例えば、電力取引のプラットフォームがあります。太陽光発電パネルなどを自宅に備えた「電力を売りたい方々」と、「電力を買いたい方々」をマッチングするプラットフォームです。発電方法や取引価格などを把握できるトレーサビリティを持った電力として流通させ、決済にはDCJPYを使います。取引成立と同時に決済まで完結する仕組みです。
地域通貨をデジタル化する手段としてもDCJPYが検討されており、福島県会津若松市や宮城県気仙沼市が実証実験を発表しています。気仙沼市は子育て世帯への臨時特別給付金の支払いをDCJPYの実発行で実証実験を行ったほか、会津若松市は特典付きの地域クーポン等の市民サービスをデジタルで取り組んでおり、当社も以前実験に参加したことがあります。
他にも小売や流通などの分野でも、各業界を代表する企業が幹事となってユースケースの検討を進めています。特にスマートコントラクトとデジタル通貨は相性がよい仕組みです。
これまでのデジタル技術では手が届かなかった領域のデジタル化がようやく実現すると、関係機関・企業の期待が高まっています。