梅毒の感染は、男性と性的な関係を持つ男性(MSM)、HIV感染者の間で最も急速に感染が拡大している。なかでも感染者が多いのは、有色人種だという。
人種によってSTDの広がり方が異なっていることについて、ミネソタ州保健省の担当者は、「性的行動の違いだけでは説明がつかない」「医療保険の加入の有無や就労状況、(予防・検査・治療のための)医療へのアクセスに関する状況の違いもある」と指摘している。米疾病対策センター(CDC)もまた、同様の見解を示している。
新型コロナウイルス感染症の流行が、STDの広がりにどのような影響を与えたかについては、完全には明らかにされていない。CDCによると、2020年末の時点で、淋病と梅毒(第1期・第2期)の感染者数は前年と比べ、それぞれ10%、7%増加していた。また、先天梅毒の感染者数も、同時期に15%近く増加。2016年と比べると、235%増となっていた。
一方、最も一般的なSTDとされるクラミジアの感染の報告は、2019年から13%減少していた。ただ、これはコロナ禍で診療や検査が受けにくくなっていたためと考えられている。
新型コロナウイルスの感染者が最も多かった時期には、公衆衛生サービスは可能な限りすべての職員がコロナ感染者の対応に当たることとなり、壊滅的な影響を受けていた。
STDが広がりやすい理由には、これらの感染症がほとんどの場合、初期には無症状だということも挙げられる。そのため、知らずにパートナーにうつしたり、治療が困難になる感染の後期まで気づかなかったりする場合もある。
梅毒を懸念すべき理由
特に梅毒は、症状がその他のさまざまな疾患と似ていることから、「模倣の達人」とも呼ばれている。初期には無症状であるものの、後期になると、神経系や心臓、脳、目などにも影響が及ぶ。