しかし、バンガロールを拠点とする同社は現在、コロナ後の日常に向けての準備を進めている。学校は対面の従業を再開し、インフレによる物価の高騰で親たちは余分な出費を抑えようとしている。Byju’sの共同創業者で取締役の36歳、ディヴィア・ゴクルナス(Divya Gokulnath)は、「今は、自己満足に浸っている場合ではない。長期的スタンスで事業を構築していく」とビデオインタビューで話した。
パンデミックの期間中に、ブラックストーンやUBS、アブダビ政府系ファンドのADQといった著名投資家から20億ドルを調達したByju’sは、他のエドテック企業への投資を強化し、幼稚園から高校卒業までのK12期間をカバーする教育サービスに、新たな要素を加え続けている。
直近では、Byju’sの子会社のグレートラーニングが5月にシンガポールのNorthwest Executive Educationを推定1億ドルで買収した。同社はまた、昨年12月にオーストリアの数学学習アプリGeoGebraに1億ドルを出資した。
夫でCEOのバイジュー・レヴィーンドラン(Byju Raveendran)と会社を経営し、夫婦で36億ドルの資産を保有するゴクルナスは、「私たちは、より広く、より深く、より多くの製品に、より多くの地域を視野に入れて投資を行っている」と語る。
Byju’sは拡大を続けるポートフォリオにプログラミングやジョブスキル、生涯教育などを加えるほか、米国でもプレゼンスを高め、今年11月にカタールで開催される2022年FIFAワールドカップの公式スポンサーを務め、中東にも進出している。さらに、来年にはインドか米国でIPOを検討中だ。
しかし、投資プラットフォーム5F Worldの会長のガネッシュ・ナタラージャンは、「エドテックブームは、果たして今後も持続するのか?」と疑問を投げかける。「Byju’sはこのような巨額の評価を正当化できるのだろうか?」
このような疑問は、たしかに彼らにプレッシャーを与えている。Byjuの親会社のThink & Learnの2020年3月期の連結収益は前年比82%増の240億ルピー(約3億2500万ドル)に達したが、純損失は26億ルピーに拡大した。アナリストは、この損失が事業開発とマーケティングコストに起因するとしている。
しかし、ゴクルナスは2021年度の売上高が3倍になると予想しており、心配はしていない。アーメダバードのRBSAアドバイザーズのレポートによると、インドのエドテック市場は今後10年間で10倍に成長し、2032年には300億ドル規模に達する見通しだ。これは、現在の規模が1060億ドルで、今後10年間に年平均成長率16.5%を記録すると予測される世界市場のほんの一部に過ぎないと、米国のグランド・ビュー・リサーチは述べている。
ゴクルナスは15年近く前、バンガロールで100人の学生を前に初めて教壇に立ち、それが自分の天職だと思った。当時21歳だった彼女は、試験対策クラスを運営していた今の夫のレヴィーンドランに頼まれて、教師の仕事を引き受けたのだ。「教師には、生徒たちの好奇心を取り戻させる力があることに、その時気づいた」と彼女は言う。