このアプローチの問題は、コストの上にコストを重ねるばかりで効果は非常に希薄なことだ。そのため、スケーラブルな方法で軌道に乗せることは非常に難しい。
では、大気中CO2濃度の増加をビジネスチャンスとして捉えたら何が起きるだろう? それが、カリフォルニア州バークレー市に拠点をおくエアキャプチャーが取っているアプローチだ。
彼らのミッションは、同社の直接空気回収(DAC)テクノロジーを使って、工業プロセスにCO2を必要としている場所で大気から直接CO2を取り込むことだ。
「我々は大気からCO2を分離するテクノロジーを開発しました。そしてその方法は、お客様により信頼性の高いCO2供給源を提供し、CO2の輸送を必要としません」とエアキャプチャーの創業者でCEOのマット・アトウッドはいう。
「システムは、みなさんのクルマについている触媒コンバーターに似た凝縮装置を使います。この仕組みは食料・飲料の処理や食品パッケージ、合成燃料までさまざまな領域に応用が可能です。そして当社はエネルギー省、国防省、および欧州の各国から支援を受けています。現在このプロセスの商品化を進めているところで、他のCO2源との価格競争力をつけることが目標です」
同社のテクノロジー開発で重要な役割を担っているのがアディティブマニュファクチャリング(素材となる金属を積層することで、さまざまな形状を作り出す加⼯⽅法)と呼ばれている3Dプリンティング技術だ。
「さまざまな方法でこれを使っています」とアトウッドはいう。
「たとえば射出成形部品のラピッドプロトタイピング(製品開発で試作品を短時間で製造すること)に使用して、機能や収まり具合を確認します。プロセスをすばやく繰り返すことで、当社のCO2を誰よりも持続可能に最小のコストで市場に提供することができました。アディティブマニュファクチャリングはとても複雑ですが、小さな筐体でより効率的なシステムを作ることが可能になります。当社のビジネスモデルは、統合された超局所化システムの上に成り立っています。アディティブ方式のスケーラビリティこそが3Dシステム最大の特徴です」
「機械的フィルター(濾過装置)を考えてみてください。今や世界中にあらゆる形とサイズのものが出回っています」と3Dプリンター大手3Dシステムズのソリューション責任者であるスコット・グリーンはいう。