ビジネス

2022.07.06 08:30

周回遅れの日本のデジタル通貨 一気に世界トップにする良策とは


まず恩恵を受ける法人。資金繰りがリアルタイムに。


武藤:デジタル通貨が銀行預金の1つの形態になれば、一般消費者の日常生活やビジネスの様々な場面でDCJPYが活用されると予想できます。具体的はどのような活用例が想定されますか?
 
時田:まず法人のユースケースが考えられます。製造業や小売業のサプライチェーンなど法人間取引では、日々の取引額が数百万円や数千万円、時には億単位といったことがあります。日本は商習慣として月末で締め翌月など一定の期間をおいて一括して処理しています。このような高額取引は、ほぼ間違いなく銀行決済です。

もしキャッシュレス決済をしようと考える場合、銀行預金を別の形でプールしてから代替資産で決済しなければなりませんが、非効率的です。

しかしDCJPYならば、銀行の管理下で預金をデジタル化して運用できます。例えば、末締めなどの締日で区切って処理しなくても、「〇〇が生じたら自動的に支払う」といったロジックを組み込めます。これをDCJPYでは「プログラマビリティが高まる」と説明しています。

プログラマビリティとは、さまざまなビジネスニーズに応じたプログラムを書き込むことができるという意味です。サービスや商品の受け取りと同時に支払いを完了させる「同時受け渡し」(DVP:Delivery versus Payment)なども効率的に実装できます。

このメリットは、サプライチェーン業者間の資金繰りの改善や決済手数料などコスト問題の解決に貢献します。支払いは365日24時間、いつでも行えるようになり、決済はリアルタイム化できるので、経営者を悩ませてきた「今月の資金繰りのために融資を受けざるを得ない」といった問題は事実上なくなります。

武藤:資金効率が劇的に変わりますね。

時田:もちろん銀行側にもメリットがあります。融資をする際に莫大な手間がかかっていた財務諸表の確認なども、リアルタイムのデータを使い素早く審査を完了できます。ロジックを組むことで融資を自動化する仕組みも構築できるでしょう。

また、これは社会的義論の余地があることですが、月給を廃止して時給化し、毎時ごとに従業員に自動的に支払うことも理論上は可能です。経理部の業務内容そのものが一変してしまう可能性を持っているのがDCJPYです。

武藤:ありがとうございます。後編ではビジネスへのさらなる影響のほか、私たちの生活がどう変わるかといった点にも踏み込んでお聞きしたいと思います。

時田氏と武藤氏の写真



時田 一広
ディーカレットDCP 専務執行役員 兼 CPO プロダクト開発部門ヘッド/1995年にIIJ入社。法人向けシステム構築、ITアウトソーシングサービスの立ち上げを経て、クラウド事業責任者を務める。1999年の株式手数料自由化に伴いインターネット・トレードシステムを開発。さらに外国為替証拠金取引システムなどの金融システム事業を拡大。2005年にIIJ取締役に。2018年、暗号資産やブロックチェーンによるイノベーションを起こすべく株式会社ディーカレットを設立、2022年より現職。
 
武藤 惣一郎
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 キャピタルマーケット プラクティス アジア太平洋・アフリカ・ラテンアメリカ・中東地区統括 兼 日本統括 マネジング・ディレクター/2005年にアクセンチュア入社後、金融業界にて事業戦略立案、営業改革、システム構想立案等の多数のプロジェクトを主導。近年は証券会社を中心にDX戦略策定およびそれを支える経営変革を推進。アクセンチュアのキャピタルマーケットプラクティスにおけるグローバルリーダーシップの一人。

文=武藤 惣一郎(アクセンチュア)

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