ビジネス

2022.06.17 10:00

培養肉SCiFi Foodsがゲノム編集技術で製造コストを削減

New Africa / Shutterstock.com


遺伝子編集技術を活かしてコスト効率をアップ


米非営利団体Good Food Instituteによると、細胞ベースの食品は一般的に、動物から採取した幹細胞からつくられる。幹細胞は、酸素濃度の高いバイオリアクター(培養装置)内で培養してから、通常の肉を構成する骨格筋、脂肪、結合組織へと分化される。この工程にかかる時間はおよそ2週間から8週間で、製造する肉の種類によってさまざまだ。
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一方、SCiFi Foodsの共同創業者ジョシュア・マーチ(Joshua March)の話では、同社は細胞ベースの牛肉を、高いスケーラビリティと、コストを大幅に抑えたかたちで製造できる。それを可能にするうえで大きな役割を果たしているのが、ゲノム編集技術の「Crispr(クリスパー)」だ。この技術を使えば、「対象を絞り込んでDNAのごく一部だけを変えることができる。たとえば、たった一つの塩基対を削除することも可能だ」

「これは、作物の遺伝子組み換えとは異なる。SCiFi Foodsの製品で使われる細胞には、まったく新しい別のDNAや、遺伝子が組み換えられたDNAを加えないからだ。私たちは、ごくわずかなマイナーチェンジを加えて、細胞の働きを変化させている。その結果、製造にあたってのコスト効率がよくなる。また、ロボットで液体処理を行うなどして自動化を進めているので、小さな変更を施すことによるさまざまな変化のインパクトを発見できる」

「遺伝子工学へのこうしたアプローチを発酵分野で初めて手がけたのが、ザイマージェンなどのバイオ企業だ。SCiFi Foodsの共同創業者カシア・ゴーラ(Kasia Gora)博士は、ザイマージェン創業初期の従業員だった人物で、酵母の遺伝子処理などにおいて、このアプローチを食品に応用した」
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「このアプローチこそが事実上のカギとなって、将来的には、培養肉の製造コストを従来の食肉製造コストと同等になるまで引き下げられると私たちは考えている」とマーチは語った。

およそ30人の従業員を抱えるSCiFi Foodsは、サンフランシスコのベイエリアにある研究開発施設に移ったばかりだ。面積1万6000平方フィート(約1490平方メートル)を誇るこの施設のうち、1万平方フィート(約930平方メートル)は研究用に確保したとマーチは言う。この新しい施設は、同社が米国で培養肉の認可を得るための重要なステップとなる。

マーチはこう語る。「私たちには絶対的な自信があるし、商品化を行うための時間枠についてもまったく問題はない」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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