ビジネス

2022.06.14 10:00

これから投資すべきは、この4分野。欧州最大の「リテールカンファレンス」レポート


欧米との差はもはや埋まることはない


ロシアによるウクライナ侵攻や物価上昇など、欧州の小売業を取り巻く環境は厳しい。電気代が急上昇し、英国では4月のインフレ率が9.0%にも達した。筆者がロンドンに滞在している間も、BBCのニュースでは、生活コスト上昇に苦しむ国民の声を多数紹介していた。


生活コスト上昇について報じる英BBC

そんななかで開かれた今回のカンファレンスでも、業界が抱える不安は深刻に伝わってきた。ただ「それでも、将来を悲観することはない」という前向きなメッセージも発信されていた。Shoptalk Europeのキーノートスピーカーたちが語ったように、サプライチェーン、決済、新しいプラットフォーム、消費者と、投資すべき分野は明確であり、現在、小売業界全体が知恵を絞って取り組んでいる最中だからだ。

筆者にとって、今回のロンドン出張は2年4カ月ぶりの海外渡航であった。この2年で世界は加速度的に進化していた。日本では「コロナ禍の前にどうやって戻すか」が話題の中心であるが、欧州の小売業界をはじめとするビジネスの世界は、コロナ禍をきっかけに軌道修正して、圧倒的なスピードで前へと進み続けている。

小売業界に限らないが、DXやオムニチャネルにしても、日本と欧米とではやっていることが本質的に異なっている。「形」にこだわる日本に対し、欧州や米国は「いかに物事を圧倒的なスピードで進められるか」「いかに消費者の体験を向上させるか」といった視点でビジネスに取り組んでいる。進んでいる方向が違うので、この差はもはや埋まることはない。


カンファレンス会場の様子。多数のツールベンダーなどが出展していた

もちろん、100%欧米のまねをしろというわけではない。学べる部分は学び、必要に応じて日本のやり方に落とし込んでいく、こうした努力が求められているのだ。

大切なのは、正しい情報、つまり進むべき方向を指し示す「コンパス」を手に入れることだ。そのためには動き回って情報を集めるしかない。今回はひさしぶりの海外渡航であったが、あらためて足で稼ぐ情報の大切さを感じた。

文・写真=田中森士

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