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2022.06.09

ギグワーカーを突き動かす2つのモチベーションとは?

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単発や短期の仕事(ギグ)をこなす「ギグワーク」では、働き手の労働意欲を刺激するアルゴリズムが重要な役割を果たしている一方で、いわゆる「上司」が存在しないため、モチベーションは主に自分自身で生まなければならない。

そんなギグワーカーがやる気を出す方法は主に2つあるとする興味深い研究論文が、米ペンシルベニア大学ウォートン校経営大学院により発表された。

配車業のギグワーカーの多くは、乗客との関係から大きな喜びを得ていた。これはアプリのアルゴリズムで、乗客からの良い評価が運転手の成功の主要因となることに裏打ちされている。

ギグワーカーはさらに、効率を上げるほど報酬も高くなるというところにゲーム性を見出す「ゲーミフィケーション」的な姿勢で仕事に臨んでいた。だがアプリによる追跡が不正確であることが多いため、運転手とアプリとの間には敵対関係のようなものも生じ、運転手の多くは自前の追跡ツールを作り、成績を上げるためにアルゴリズムの裏をかこうとさえもしていた。

論文では、運転手が乗客に対して追加のサービスを積極的に提供している例が紹介されている。こうした乗客との関係性により、仕事の意義が深まるのは明らかだ。さらに、こうした努力の動機は、チップ収入を増やす目的ではなく、プロ意識ややりがいだったことも示された。

乗客との関係改善に努める運転手の多くは、自分のことを単なる運転手ではなくカウンセラーや旅行ガイドと位置付けていた。これにより、新しい友人ができたり、ビジネス上のコネができたりと、さまざまな非金銭的メリットを得ていた。

一方、効率性をより重視するギグワーカーは、勤務時間外に仕事について考えることが少ない傾向にあった。主な関心は稼ぎを最大化することにあるため、乗客の荷物運びは手伝わないなど、乗客と自分との間に明確な境界線を引いていた。

これにより乗客に対する不信感が強まり、法的責任を問われる可能性に対する恐怖から、付加価値を与える追加業務を回避する傾向にあった。こうした不信感の対象はアルゴリズム自体にも及び、アルゴリズムは役に立たず、ドライバーと運賃のマッチングや収入計算を効率的かつ正確にできないとみなしていた。

こうした考え方の人の多くは自分の仕事について否定的に考え、ギグワークは低賃金のわなであり、自分はそこからどうにかして抜け出したいと考えていた。また、自分自身にスキルがあるとか、自分は仕事で成功していると考えることができなかったという。

どちらかのアプローチのみを採用したギグワーカーは少なく、状況によって両方のアプローチを組み合わせている場合の方がはるかに多かった。それでも、今回の研究結果は、ギグワークを提供する企業に対し、アプリのデザインに関する熟考を促すものだと論文は指摘している。

編集=遠藤宗生

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