リセッションと「リップスティック効果」、その実際の関連性とは

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リセッション(景気後退)が起きているとき、女性たちは家計に大きな負担をかけない範囲で、気分を高揚させるような買い物を楽しむとされてきた。その考えに基づいているのが、景気が悪いときに上昇するという「リップスティック(口紅)指数」、または「リップスティック効果」だ。

だが、調査会社NPDグループが公表した新たなデータによると、リセションの懸念が指摘されるなか、口紅その他のリップメイク用の商品は今年第1四半期、前年比48%増となる売上高を記録している。

「リップスティック効果」を最初に事実と仮定したのは、米ボストン大学のジュリエット・ショア教授(経済社会学)だ。1998年に出版した『浪費するアメリカ人:なぜ要らないものまで欲しがるか』の中で、これについて次のように説明している。

「(不景気のとき、女性たちは)手の届くぜいたくや、高級百貨店で買い物をする快感を求める……化粧品(の購入)は、単調な日常の経験からの逃避だ」

そして、2001年にはエスティローダーのレナード・ローダー会長が、「9月11日の同時多発テロ事件の後、口紅の売り上げが急増した」と明らかにした。さらに、米経済が景気後退に陥った2008年にも、同社の口紅は売り上げが伸びたという。

一方、テキサス・クリスチャン大学のサラ・ヒル教授(心理学)らは、この「効果」についてさらに詳しく検証。口紅だけでなく、美容関連のすべての商品は「女性の外見的な魅力を高める商品」であり、すべてに「リップスティック効果」があると仮定し、複数の視点から調査を行った。

その結果、リセッションの兆しは常に家具や家電、趣味関連の商品の購入を控えることにつながっていた一方、美容製品に対する女性の購入意欲は、上昇させていたことが分かったという。

女性たちは置かれている経済状況にかかわらず、より高額な化粧品を選んでいた。つまり、「景気後退の兆しは、安価なブランドの化粧品に対する購入意欲を高めていたわけではなかった」ということになる。
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編集=木内涼子

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